静かな退職のメリットとリスク

静かな退職という言葉を初めて聞いた時は「……?🤔」と思ったが、要は仕事において必要最低限のことしかしない状態を指すらしい。必要最低限の仕事とはなんだろうかと思わなくもないが、まぁつまりクビになるギリギリのラインということだろうか。基本的には疲れた中年や定年間際の選択肢という風に思えるが、調査によると実践者の3割が若手という記事があった。

転職はしないが全力投球もしない 「静かな退職」約3割は若手 | AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議

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本当に実践している人はいるのか?

そもそも静かな退職を実践している人がどれくらいいるのか気になるのだが、数について記事の文章では触れられていない。<調査レポート>「静かな退職」選択のきっかけは企業にあり、7割が「働き始めてから静かな退職を選択した」と回答|働きがいのある会社(Great Place To Work® Institute Japan)が元データ記事のようだが、これを見ても直接的には書かれていない。

ただ、グラフを見ると実践者年齢構成の円グラフがn=169となっている。これが全数だろうか。有効回答数自体は6998であるらしいので、そうであるとするならば、上位2,3%のエリートサボリーマンの内訳ということになり、その中に若手が3割いたところでなんなの?という気がしなくもない。いつの時代も一定数はサボるもんである。そこに年齢はない。

コスパは良い

ということで調査自体なんだか結論ありきっぽい感じがして鼻白んだのだが、静かな退職というワードがトレンドになっているのは確かにそうであろう。特に大きな組織において解雇規制の強い日本においては、クビにならないギリギリの働き方は労働者視点では相当にコスパが高い。もはや組織から搾取することを目的として働き方といっても過言ではない。平然と理不尽な扱いを受ける中小零細ではその限りではないので、静かな退職ができる時点でそれなりに恵まれた職場かもしれない。

ということで、恵まれた職場で静かな退職を実践した場合、経済的には非常にコスパが良いということになり、できないやつに責任ある仕事は任されないため、仕事上のプレッシャーもないだろう。周囲からの扱いは冷たいものになりそうだが、それが気にならなければ健やかに暮らせるかもしれない。静かな退職者のメンバなど、リーダやマネージャにとっては想像したくもない悪夢だが、知ったことではない。

けっこうリスキー

一方で、この働き方は実はけっこうリスキーである。特に若手の場合、若手にとって最大の資本である人的資本を自ら毀損する行為であることを自覚しなくてはならない。定年間近ならば逃げ切れるかもしれんが。というか中高年の場合は逃げ切り戦略一点であろう。

一方で若手は将来的なことも考える必要がある。副業で別のスキルを磨く(人的資本を毀損しない)という選択肢はあるが、それだったら本業ちゃんとやれよという話でもある。まぁクリエイタなど金にしづらいスキルを磨くのはアリかもしれない。ただそのスキルを金に出来ないから嫌な本業をしているわけで、いくら金にしづらいスキルを磨いたところでそれが社会的に人的資本として機能するかは甘く考えないほうが良いだろう。

それよりも静かな退職実践者がやるべきことは経済的資本、つまり資産の形成である。生活費を抑え、組織から収奪した給与は可能な限り長期投資につぎ込む。オルカンなどのインデックス投信が王道であろう。日本は今後も低金利で円安が続くということに賭けるなら、FXでミセス・ワタナベになるのも個人的には悪くないと思う。

これを続けて資産を形成できれば、多くの状況に対応できるようになるはずだ。ずっとできるとは思わないほうがよい。必要最低限の仕事の必要最低限とは何かだが、それはたいていの場合組織にとって十分ではない、給与に見合わない仕事である。静かな退職は、働きぶりと給与が必ずしも線形で反映されるわけではないからこそ有効なものだ。そういう側面がある。だから、なるべく早くどうなっても良いように経済的資本を築くのが重要だ。

ちゃんとできる人は能力者

しかしまぁ、最大の資本である人的資本の毀損に無頓着な人は、経済的資本の形成もできないのが現実であろう。そうして、気づけば何の資本もないまま歳を取ることになるわけだ。中高年ならいざ知らず、若い時分で正しく静かに退職できる者は或る種の能力者だと思われ、彼らを静かに退職させてしまうことはむしろ社会や組織側の瑕疵とすら思う。

まぁ実際、社会や組織側もだいぶ問題はあるんじゃないのかね……。言われているほどに静かな退職者の絶対数は多くなさそうだが、よく聞かれるワードになっているのは確かだし、自分としてもそういう働き方をしたくなる気持ちはけっこうわかってしまう。静かな退職者は同僚としては最悪だが、そういう人がいるからこそ組織や社会も対応しなくてはいけないと思うかもしれない。

皆の仕事が金銭的に報われる社会というのは、当たり前のようで難しい。

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