初学者による消費税制とインボイス制度のメモ

インボイス制度、というか消費税制について調べる必要があったので、そのメモ。なお自分はしがないエンジニアであり経理ではないので、実務経験はないということは注意されたい。その分同じような立場の人にとっては初学者同士特有のわかりやすさがあるかもしれない、などと考えてメモを公開する。

この記事のポイントは以下である。

  • 消費税とは何か
  • インボイス制度とは何か
    • インボイス制度はなぜ問題になっているのか
目次

消費税とは

まず消費税とはなにかだが、以下のような税である。

  • "モノ"や"サービス"を"販売したとき"に価格に上乗せされ
  • "消費者"が支払い
  • "事業者"が納める(決算のあと)

まず発生タイミングは売り上げのタイミング。で、消費者が支払い、事業者は消費税を預かって(預り消費税)、決算の後にまとめて支払う、という仕組みだ。支払う人と納める人が異なる税を間接税というが、消費税は間接税の一種である。

消費税を納める流れ

消費税は非常にややこしい仕組みなのだが、そのややこしさは主に以下の2点に起因するものと思う。

  • 消費税はモノによって異なる
  • 間接税であり、納めるのは事業者で、事業者の規模によって扱いが異なる

この2つの違いについて意識しつつ、まず消費税を納める流れについて把握する。以下のように、1万円+消費税でモノを問屋から販売店におろし、販売店は消費者に2万円+消費税で販売したとしよう。消費税は10%とする。

graph LR m1(問屋) m2(販売店) user(消費者) m1 -->|モノ: 1万円 消費税1000円| m2 m2 -->|モノ: 2万円 消費税2000円| user

まず、問屋について考えよう。問屋は販売店から10,000円と消費税1,000円を受け取る。この1,000円が預り消費税となり、決算後に支払うものになる。これはシンプルだ。

次に販売店について考えよう。販売店は消費者から20,000円と消費税2,000円を受け取る。この2,000円が預り消費税……にはならない。なぜならば、消費税2,000円のうち1,000円は問屋が払っているからだ。つまり、販売店の預り消費税は2,000円-1,000円(問屋が払う分) = 1,000円 となる。

これが消費税の仕組みだ。つまり、事業者は仕入れと販売の両方で、それぞれ消費税額がいくらになっているかを知っている必要があるわけだ。

免税事業者とは

これはちょっと考えただけでも、けっこうたいへんなことだというのは想像がつく。消費税が出来たのは1989年で、当時の混乱はどれほどのものだったか。子供の頃近所に駄菓子屋があったが、あそこのお婆ちゃんがこの処理をしていたとはとても思えない。

ということだからなのか、事業規模の小さい事業者には救済措置がある。それが免税事業者で、具体的には、2年前の課税売上高が1000万円以下でかつ給与支払総額が1000万以下の条件で、消費税を納めなくて良いというものだ。したがって、どう考えても1000万売り上げてなさそうな駄菓子屋が販売時に消費税を取っていて、かつその税を納めていなくても、法的には全然問題が無いということになる。

まぁこのご時世駄菓子屋はもはや絶滅危惧種だろうが、しかし課税売上高が1000万以下の個人事業主はたくさんいるだろう。その人たちは、この手続きがややこしいうえに負担の大きな消費税から逃れることができていた。が、それがそうもいかなくなった、というのが散々物議を醸したインボイス制度である。

インボイス制度

インボイス制度とは、売ったモノの消費税額やらなんやらを明記した請求書(適格請求書)等を保存して、それを使って納める消費税を計算しなさいよ、という制度である。軽減税率なんかでモノによって税率が違うことがあるので、それもちゃんと書いて、適切な税額を計算できるようにしなさい、ということだ。

さて、これだけ言うと普通じゃないのかという感じだが、ここに一つ罠があり、請求書等に明記すべきものの一つとして請求書等を発行した事業者の登録番号がある。この登録番号がないと、その請求書の消費税額は無効である。

先の例で考えて見よう。

graph LR m1(問屋) m2(販売店) user(消費者) m1 -->|モノ: 1万円 消費税1000円| m2 m2 -->|モノ: 2万円 消費税2000円| user

ここで、販売店は問屋から請求書等を受け取るわけだが、この時この請求書に問屋の登録番号がないと、問屋分が支払うことになっている1,000円を差し引けないのである。つまり、販売店が問屋の分も含む2,000円を支払わなくてはいけないわけだ。この差し引くべき消費税額を仕入税額控除という。

さて、そんなら問屋は登録番号を取得したらいいじゃないかという話なんだが、ここで問題が発生する。登録番号を取得するには、課税事業者の必要があるのだ。つまり、免税事業者から仕入れた分は仕入税額控除に使えない

これが、インボイス制度が問題になった理由である。販売店の立場にたったとき、もし問屋が免税事業者であれば、今までと同じ額で問屋から仕入れると、仕入れ額の1割の税額を負担しなくてはいけなくなる。これは販売店からすると許されないことだ。まぁ問屋ならばそれなりの規模であることが多いだろうから、そもそも免税事業者ではないかもしれないのだが、これが個人で活動しているフリーランサーなんかだと話が変わってくる。

graph LR m1(フリーランサー) m2(企業) m1 -->|サービス| m2

このフリーランサーと企業というシンプルな関係においては、企業が今までと同じ額でフリーランサーのサービスを受注するには、フリーランサーに課税事業者になってもらう必要がある。しかしそれはフリーランサー側にとって、売上の1割もの減益を意味する。また、課税にかかる事務手続きも必要になる。それはあまりにも負荷が大きい、というわけだ。

いくつかの負荷を緩和できる措置

インボイス制度が従来の免税事業者にとって大きな負担となるわけだが、いくつか救済措置とでも言うべきものがある。

簡易課税制度

別にインボイス制度のためのものではなく、以前からあるものだが、課税売上高5000万以下の事業者は、いっていの比率で仕入れ額として計算することができる制度だ。免税というわけにはいかないが、事務手続きが簡単になるだけではなく、多くの場合実際の仕入税額控除より小さくなるとのこと。ちなみに簡易課税ではなくちゃんと計算するのを本則課税という。

経過措置

免税事業者からの仕入れについて、最初の3年は8割を仕入税額控除に使え、その次の3年は5割を仕入税額控除に使える、というもの。ただし、これは免税事業者から仕入れる側の企業が対応する必要があり、その事務経理の煩雑さから敬遠されると言われる。また、全額を仕入税額控除に使えるわけでもない。

益税か?

よく言われる免税事業者にとって消費税が益税になっていた、ということについて私見を述べたい。

ここまでの話から、免税事業者にとって消費税は益税だった、と言われる理屈自体は理解できるものかと思う。本来支払うべき預り消費税をそのまま事業者が懐に入れることができるので、事業者の利益となる「益税」というわけだ。実際インボイス制度の講座などではそのように説明された。

しかしながら、僕の見方は若干異なる。確かに教科書的にはそのように説明されるかもしれないが、それはあくまで机上の話で、現実の商いにおいては、事情が異なるように思えるのである。

多くの事業者は仕入れてきたポッキーやうまい棒を売っているわけではなく、自身が作ったモノやサービスを売っている。たとえばエンジニアであればシステムかもしれないし労働かもしれない。それらには定価がなく、価格は自分で値札をつけることになる。そして、買い手に価格を提示する。この時、消費税がいくらかを買い手は気にしないだろう。買い手が気にするのは総額である。

我々は皆、そのように振る舞っている。スーパーで買い物をするとき、値段の内訳を気にするだろうか。仕入れ原価や販管費がどう乗せられているか、考えながら買うだろうか。まず考えない。見るのはただ総額、つまり、「結局自分はいくら支払うのか」である。買手からすれば、そのうち原価や消費税がどれほどなのかはどうでもよいのだ。

そうして考えると、フリーランサーが企業に提示する価格の中に、免税分は既に盛り込まれていることが多いのではなかろうか。つまり、益税と言うが、利益を得ていたとするならば、それは売手ではなく買手であったということである。だからこそ、課税事業者になったら経営が成り立たない、苦しくなる、なんて話もあるわけだ。

もちろん、売手にとっても価格競争力を高められていた、という見方はできよう。しかし、免税事業者のような小規模な事業者は、経理にかけられるリソースも決して大きくはない。その証拠に、ほとんどの企業のエンジニアはこの記事にあるような話はまったく知らないで済んでいるが、フリーランスのエンジニアは知らないでは済まされない。本業以外のことも、頑張ってやらないといけないのが小規模事業者である。

大企業とフリーランサーに同じような事務経理を求めることは、平等かもしれないが、公正と言えるだろうか。大企業にできることもあれば、小さな事業体だからできることもある。それぞれ社会において異なる役割を担っている。免税の制度は、小さな事業者に対する合理的な配慮という側面もあったはずだ。

こうした現実の事情を考えれば、益税だったとは一概に言えないと思う。何よりも、課税売上高が1000万にも満たないような事業者にまで、あれこれと事務手続きを求め、さらに売上の1割もの税金をもっていくことが、本当に社会の発展に結びつくだろうか?短期的には僅かな増収を政府にもたらすかもしれないが、それと引き換えにもっと大きなものを失うのではないか?

これが消費税とインボイス制度について学んだ僕の所感である。あくまで私見であることは重ねて申し上げる。

しかしまぁ、消費税って考え方はシンプルなはずなのに、制度も運用も滅茶苦茶複雑になってんなぁ……。

参考

Udemyの動画

Webサイト

消費税に関する本ではないけれど、個人事業主の事務経理にかかるところ。

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