失業給付の中でもちょっとマイナーかもしれない再就職雇用手当。これを受け取るには色々な条件があるのですが、条件を満たしたうえで、手順をちゃんと踏めばもらえます。
ただ、正社員雇用であれば、退職日と失業日、内定日くらいしか気にするところがないんですが、フリーランスなど個人事業主の開業で受け取ろうと思うと、ちょっとハードです。
記事の前提
以下の人向けです。
- 失業給付や再就職雇用手当とは何かについてわかっている
- これから個人事業主として開業することを考えている(特にITエンジニア)
- 具体的に考えているわけではないが、何があるかわからない世の中なので、後学のために知っておきたい
再就職雇用手当とは何か?という基本的なところはこの記事のスコープ外です。そこはハローワークのサイトを見よう。
一点言うことがあるとすれば、失業給付などの定義的なところは、つらくてもハローワークのサイトをきちんと読んで読み解いたほうがいいです。2024年、検索エンジンはうんこ化しており、企業系ゴミブログの情報ばかり引っかかります。僕が解説記事を書いてもどうせ検索に引っかかりませんし、そもそも既にきちんと書いてくれている人は必ずいますが、Googleはそれよりも企業のゴミブログを有り難がります。あんなハローワークの記述をつぎはぎコピペして変なイメージ画像だけ貼って解説もしない記事を読むのは時間の無駄です。僕も失業給付や再就職雇用手当の基本的な条件はハローワークのサイトだけを参考にしました。
まぁそれだけだとあんまりなので、重要な注意だけ書くと、待機期間の満了から最初の一ヶ月は、大人しく何もしないでいましょう。まずは国が認める失業状態になることが最初です。この間、開業届を出さないのはもちろん、(バーチャル含む)オフィスを借りるとか、開業の準備と見なされそうなことをするのはやめましょう。仕事を受けるとかもNG(世間ではクライアントと結託して仕事したことを隠す人もいるようですが……バレたら不正受給で三倍返しですよ、とだけ……)。
そのうえで、、、個人事業主が開業にあたって本当に再就職雇用手当をもらえるのか、もらえるとしたらその条件は、などはハローワークのサイトを見てもピンときません。また、こういうニッチな情報については、まだ個人ブログが引っかかることもあるので(本記事でも参考にした記事あり)、記事書きます。
開業で再就職雇用手当は受け取れるのか
手順をきちんと踏んで手続きを行えば、受け取れます(受け取った)。ただし、手当給付の条件は割と厳しいと思うので、たとえば今後独立開業を考えている会社員の方などは、受け取れるかどうか、予めよく計画しておいたほうがよいですね。
あと、役所の人には変に隠さず相談しましょう。最終的には役所の判断なので。かなり個別的な動きになります。僕は3回くらい個別で相談に行ったかなぁ。別に不正受給しようってんじゃないし(というよりしないためでもある)、本当に開業するんだから、ちゃんと教えてくれます。
何が必要か
さて、再就職雇用手当給付の条件ですが、基本的には通常の「再就職雇用手当を受け取れる条件」と変わりません。しかし、雇用の時には問題ないが、開業となるとこの条件は……というのがあります。
それは「1年以上の継続見込み」です。これは、いわゆる正社員雇用であればまず問題にならないのですが、個人事業主の開業で継続見込みがあることを証明するのはけっこう難しい。
調べていると「オフィス備品の1年以上のリース契約とかでいける」みたいな話も見ましたが、話をした感じだとそういう雰囲気ではなかったですね……まぁこれは備品の額面にもよるのかもしれませんし、業種にもよるのかも。
恐らくITエンジニアがもっともやりやすいのは、「委託契約書(の写し)」と思われます。事例もあるし、また役所の方の持っているチェックリストみたいなのにも載っていたので、間違いないかと。下記記事は参考になりました。
僕は1年契約の準委任な業務委託の契約書の写しでいきました。契約書ハロワに持ってっていいですかの許可も先方に取ったうえで。
ここで注意なのは、「1年以上」とは何かです。たとえば契約期間が1年の場合「一年以上」と判定されません。どうもこれは役所語らしく、1年以上とは数学的な意味の1年以上ではない模様。契約期間1年以下の場合は、「更新すること」まで含めて書面上契約書にあるとスムーズです。自分は更新の記述を書面にしていなかったため(これはむしろ額面が安めの契約だったので先方が気を遣ってくれたんです)、ここで引っかかりました。
ただし、これは総合的に勘案されるところでもあります。僕の場合は「口頭で契約更新の可能性があることを確認」「委託された業務内容が過去の職歴と関連している」などを書面に記述することで、総合的に「1年以上継続見込み」と判断されました。まぁここらへんは職員の人が教えてくれると思います。
ちなみに自分の場合は準委任契約だったので期間が明確でしたが、請負契約の場合、納品日を見られるんじゃないかと思います(その場合、10万円とか安すぎるとちょっと……と言っていたので、額面も最低限は見られると思います)。
難しそうな場合
粘る僕「一年以上の継続見込みって厳しくないですか?」
粘られる職員さん「そうですねぇ……」
色々と聞いた。
粘る
開業から申請まで1か月と言われるが、「いやー一年以上の継続見込みって、そんな契約すぐに取れるかわからないですよ」と愚痴ったところ、役所の人から2年まで大丈夫と言われました。意味不明ですが、申請期限が切れても資格はあるので申請可能らしい。意味がわからない。リーフレットによると以下。
https://www.mhlw.go.jp/content/000993613.pdf
雇用保険の迅速な給付のため、申請期限に申請を行っていただくことが 原則ですが、申請期限を過ぎた場合でも、時効が完成するまでの期間 (2年間)について申請が可能です。
……?
再就職雇用手当の時効の起算点と終点については以下。
1年を超えて引き続き雇用されることが確実と認め られる職業に就いた日の翌日起算して2年を経過す る日
なるほど……?つまり……2年はOKということ……?え、じゃあ一ヶ月とは……?
解説くれているサイトもありました。
再就職手当を期限切れでもらわなかった場合にもらう方法【時効2年】 - キベリンブログ
意味がわからないが、微妙な差はあるものの、とにかく2年大丈夫らしい。なので契約取るまで頑張るっていう選択肢はあるかと思います。
「じゃあ一年続けばそれが証明になるの?」と聞いたところ「"見込み"であることが条件なので……」と、つまり1年続けました!では一年見込みではないのでダメな感じでした。どういうことなの……。
失業状態で求職活動をし続ける
再就職雇用手当の条件を満たすのが難しそうな場合、フツーに失業手当の給付を受けるという選択肢が考えられます。これのいいところは、満額受け取れることです。
え、それだとめっちゃ待たないといけなくない?となりそうですが、役所の人の話によると開業そのものは必ずしも失業手当受給資格の喪失にはならないようです。役所の人に「いやーマジで一年以上の継続見込みってかなり厳しくないですか?」と話をしたところ、開業しながら失業給付を受け取ることもできるという提案をされました。ただし働く時間に制約(週20時間以内だったはず)があり、また申告の義務も生じます。失業状態と見做されるための就職活動も継続しないといけません。また、開業届出していいのかとか(バーチャル含む)オフィス借りていいのかとか、失業状態と見なされなくなる塩梅を役所の人に確認すべき。ここを間違えると不正受給とされる可能性もあるのでシビアです。逆に言うと、失業状態と見なされる範囲を把握したうえであれば、意外と活動はできそうです。
とはいえ条件に気をつかううえ、数ヶ月にわたって活動に大きな制約を受けることになります。この制約は実際にやることを考えてみるとわかりますが、働いた分だけ差っ引かれるなど「働くなよ!絶対に働くなよ!!」と言われているような気分になるもので、精神的にも非常によろしくありません。なので、再就職雇用手当を受け取れそうならそちらのほうがよいと思います。
受給期間延長の申請
他の選択肢として、失業手当を受給期間を延長する申請があるようです。これも役所の人に「いやーマジでほんとに一年以上って厳しいですよね?ね?」と言っていたところ、教えてもらいました。これをやると、開業してやっぱりダメでしたと、廃業した後にもらえるやつです。
雇用保険の失業給付受け取りタイミングを4年延長できる起業後廃業の特例とは | コラム | 一般社団法人 公的保険アドバイザー協会
ただ廃業することになります。たとえ売上なくても貯蓄ある限り俺は粘るぞ!という気でいる人には向かないかもしれません。
なかなか煩雑ですが……
独立開業は大きなリスクを伴うものです。安定した収入は途絶えます。開業にあたって、失業給付や再就職雇用手当は受け取れるものなら受けとりたいものです。そのための保険ですしね。ですが、その手続きは煩雑かつ、条件はややハード、ということでした。
しかし、これから開業するぞって人に一年以上の継続見込みを求めるのは中々エグいなぁと思います。どっちかっていうと継続できない時こそほしいと思うんですが、まぁそれは受給資格延長しておいて、失業給付を改めて受給してねということになるのかな……。なんだかなぁ。失業中の制約もやけに大きくて、働く意欲を阻害しているように思いますし、特例を重ねるより抜本的になんとかしたほうがいいんじゃないでしょうか……。
まぁでも、無事受給できたことは良かったし、有り難かったです。失業は計画的に(謎)
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