マイクロ法人、零細会社における関係者への利益分配

不確実性の高まる昨今、リスクテイクのみならず、リスク回避の側面においても、自ら法人を設立するケースは今後増えていくだろう。一人ないし複数人で事業を起こす場合はもちろん、個人の資産管理をメインとするマイクロ法人なんかも最近は多いようだ。

ということで、そういったちっちゃい法人において、関係者にどういった利益分配ができるかを考えていたので、まとめる。

目次

関係者

ざっと考えられる関係者。

  • 株主
  • 役員
  • 従業員
  • 顧客
  • パートナー

直接的な報酬

要は金。基本的にこれでやるべき。

役員報酬

役員になれば、役員報酬という形で明確に報いることができる。注意点はいくつかある。

  • 損金算入するには(経費として計上するには)、額面を期首から3か月以内に確定しなければならない
  • 副業でやっている場合、社会保険の関係で会社には確実にバレる
    • べき論で言えば、会社に許可を取って公明正大にやるべきだが、まぁまぁ実情としてあまりおおっぴらにやりたくない場合もあるだろう
      • なんだかんだで副業規定残ってるからなぁ。人の話を聞いていると、会社によっては有名無実化してるところもあるっぽいけれど、自分のいたところで副業、まして法人設立なんてまず考えられなかったなぁ
  • マイクロ法人の場合は、給与所得控除が55万であるところが節税のポイントになるか

従業員の報酬

従業員として雇用して給与を支払う。

  • 法的に守られている(経営者目線だと守らなければならない、とも言える)
  • 福利厚生として認められる範囲が広い

借り上げ社宅

役員の場合は認められづらいようだが、経費になるためこれが出来ると大きな節税になる。従業員にとっても大きな節税。

配当金

配当金は給与と比較して税制上不利だが、役員ではない出資者にも直接的な利益を分配できる。

税制上不利というのは、利益から分配するスキームあるため、損金不算入(法人税とか取られる)であるにも関わらず、個人の所得として税金がかかるからだ。明らかに二重課税でしょということで、配当控除が10%(給与とかの課税所得の合計が1000万超えると5%)認められているものの、法人税の税率と合ってないだろという感想しかない。また税制も複雑で、特に1000万のラインを超えるか超えないかのあたりはとても面倒くさい。

(2) その年分の課税総所得金額等が1,000万円を超え、かつ、課税総所得金額等から証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額を差し引いた金額が1,000万円以下の場合(パターン2)

次のイからハの合計額

イ 剰余金の配当等に係る配当所得の金額×10パーセント

ロ (証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額のうち、課税総所得金額等から1,000万円を差し引いた金額(A)に相当する部分の金額)×2.5パーセント

ハ 証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額のうち(A)を超える部分の金額×5パーセント

(注) 証券投資信託の収益の分配に係る配当所得のうちに特定外貨建等証券投資信託以外の外貨建等証券投資信託の収益の分配に係る配当所得がある場合には、その金額に係る控除率は、2.5パーセントが1.25パーセント、5パーセントが2.5パーセントとなります。

No.1250 配当所得があるとき(配当控除)|国税庁

そういうことなので、役員=出資者のパターンで、利益分配としては配当はあんまりうまくない。役員報酬のほうがよい。ただ役員報酬の制約で嫌気する場合は配当金もありか。

仕事の受発注

仕事を受発注することで、経済的な流れを作ることができる。副業禁止でも、低額な一回こっきりの仕事であれば、あまりうるさいこと言われないと思われる。確定申告が必須となる20万円が一つの基準だろうか(まぁ正確には住民税周りのこともあるので低額でも確定申告しなくてよいわけではないはずだが、実態としてね……)。

リスクはあるので、そこらへんは双方の合意のもとで。あと当然だけど実態として贈与みたいなことはしないように(贈与と見做されると贈与税がかかる)。

ストックオプション

上場する予定があるならいいだろうけど。非上場の場合、売却時のこととかを考えた取り決めになるのか。正直よくわからん。まぁ零細、マイクロ法人で考えることじゃないだろうと思う。

報酬ではないけど……

報酬は基本的には直接的な利益分配であるべき。そのうえで、報酬ではないんだけれど、人によってはそれに近い感じ方ができるかもしれない、というかできるような仕事をしようね、というところ。

やりがい、経験

昨今の情勢的にぶっ叩かれそうなワードだが、真面目な話一番の報酬だと本気で思う。というか発起人=役員だったらもうこれしかないくらい。これに同意できない人は役員になるべきじゃない。

ただこの価値観を従業員に広げると危険性があるのはわかる。この言葉で人を利用する悪い奴たくさんいることは事実。実際僕も被雇用者の立場で雇用者側にこれ強調されたらめっちゃ警戒する。

やりがいや経験を、直接的な利益分配を下げる言い訳にする奴は、やっぱりクソってことだと思う。そしてそれは役員でも同じ事が言える。やりがい、経験が第一なのはそうなんだけど、だからといって報酬を下げていいよね、にはならない。そしてこれは、自分に対してもやってはいけない。

人間は弱い。いいときもあれば悪い時もある。いいときはいいんだよ。気持ちで頑張れる。でも悪い時、役員はもちろん気持ちで奮起しないといけないけれど、その時に過去のリアルな報酬があれば、それは大きな支えの一つになるだろう。

とはいえクソ赤字企業で高額な役員報酬請求するのはサイコパスだと思う。

経費

経費は報酬ではないが、「関心のあることを会社の金でできる」場合は嬉しい。たとえばエンジニアであれば、事業で使うためのITサービスや、その勉強に必要な教材代などが経費でやれればかなり嬉しい。Elasticsearchとか個人でやるには高いものも多い。AIやるためにNVIDIAのグラボを買えれば小躍りするだろう。旅行好きなら出張さえ楽しいかもしれない。

まぁでも、ここらへんは感じ方は人によりけりだろう。金もらっても勉強なんかしたくねぇわという人に「技術書代が出るなんてとても素晴らしいことだね」と言ったら「は?」だろうし、業務以外で極力人と接したくないインドア派に「出張費用出してもらって全国を飛び回れるなんて最高だね」と言えば「おうちに帰して」だろう。僕は帰りたかった(と言いつつ前職では出張先で有給取ったこともあったが……せっかくここまで来たんだしと。インドア派だったがそれ以上に貧乏性だった)。

なので、上と関連するのだが、その事業をやることそのものが楽しければ、事業に関係するものが会社の費用でできるため、役員の観点なら節税だし、従業員の観点なら給与みたいなもの、とか言ったらなんかブラック企業っぽいな。

あと飲食を伴うMTGなんかは、経費になるか?ラインもあるけれど、その範囲内であればまぁ。ってか話を聞いてると「それは私物では?」みたいな使い方もよく聞くんだけれど、捕まってないだけのスピード違反者なんじゃないかなぁ。まぁ自信をもって事業に必要と合理的に説明できるものだけにしとこう(それでも最終的な判断はお役人次第……)。

所感

当たり前だが、基本的に金銭面で報われるような形態を取るべき。役員の場合は役員報酬、従業員なら給与。可能なら借り上げ社宅は節税効果が大きい。そのうえで、事業そのものを楽しめることがやはり重要だと思う。ただそれを、報酬を引き下げる理由にしてはならない。

マイクロ法人のひとり社長の場合、そもそも法人で稼ぐことを目的にしていないので、どうすべきかはだいたい決まっていると思うが、それ以外だとやっぱり総合的に考えることになるかなと思う。

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