Amazon.co.jp: Kindle Unlimited:読み放題ストア: Kindleストア
鳴り物入りでついに日本でもサービス開始されたKindle Unlimited。サービス開始直後こそあちこちで騒がれたものの、あれから三ヶ月以上たち、あまり話題にもならなくなりました。むしろAmazon側から予告なく対象作品が削除されたなど、悪い話が盛り上がった印象かもしれません。
とはいえ一般ユーザーからしてみれば、気になるのは、とどのつまりこのサービスに月額980円の価値はあるのかどうか、でしょう。まぁ、たいていの人にはあると思います。でも、それも使い方次第です。私の思う、良い使い方について書きます。
良い使い方
現在のKindle Unlimitedのラインナップは、お世辞にも良いとは言えません。トップセラーを見れば、その微妙さがよくわかるでしょう。自己啓発本、胡散臭いビジネス書、古い漫画、微妙にアダルト、そんなものでランキングが埋め尽くされており、眺めているとゲンナリします。
しかしながら、その中でも探していけば、多少は興味を引くものもいくつかあります。それをいかにして探していくかが、良い使い方の鍵となります。
そして、以下の2種類の使い方が考えられます。
- 興味のある分野を乱読
- 検索の幅を広げるデジタル図書館
以下、詳しく見ていきます。
興味のある分野を乱読
先に述べたように、現在のKindle Unlimitedのラインナップは、決して良いものではありません。したがって、「欲しい本は読み放題対象になっていない」と考えるべきです。もしピンポイントに欲しい本が対象になっていたら、それはたいへんな幸運です。
したがって、狙うのはタイトルではなく、ジャンルです。興味のあるジャンルについて探すと、惹かれるタイトル本が、いくつか読み放題の対象になっているはずです。
具体的には、とにかく一冊、興味のある分野で読み放題になっている本を見つけます。そのためには、辛抱強くくだらないランキングや○○タイトル一覧を探していかねばならないかもしれません。この作業が一番しんどくて、また運に左右されるところです。しかし多くの読書家は、素晴らしい本との出会いが偶然によるものであることを知っているはず。まぁ、面倒臭がらず、本屋の本棚をアテもなく眺めるような気持ちで、Webページを見ていくとよいのではないでしょうか。
そうして、とにかく1冊でも、興味が惹かれるものを見つけさえすれば、後は簡単です。Amazonの素晴らしいレコメンドシステムにより、芋づる式に、関連する書籍でかつ読み放題になっている本がオススメされます。そうして辿っていくと、それだけで月額980円には十分な読書を楽しむことができます。
ただし、その多くは読み放題でなければ手に取らなかったであろう本です。そのことについて、読書の幅が広がったと喜べる程度には、好きなジャンルである必要があります。
月額制のデジタル図書館として
上述したように、Kindle Unlimitedで目立つ本は、現状、ビジネス本、自己啓発本、漫画、あるいは意欲のある特定の著作者の本に限られます。しかし、検索ボックスで専門用語を検索してみると、意外なことに専門書も少しは引っかかります。特にWeb系、コンピュータ関係は、そこそこ引っかかる。
驚くべきことに、中には一冊5,000円もするような技術書でも読み放題対象に入っていることがあります。たとえばこのCUDAプログラミングの書籍など。
しかし、考えてみるとそれは驚くべきことでもないのかもしれません。この手の専門書はすぐに読み終えるようなものではなく、ずっと手元において、必要な時に参照する、という使い方が普通です。したがって、10冊という冊数制限がある以上、この本は必要な時にDLして、必要な箇所を参照したら、後はまた返却するという、そういう使い方になるでしょう。
つまり、デジタル図書館のようなイメージでしょうか。これこそ、専門書のあるべき使われ方なのかもしれません。専門書はニッチな需要であるため、どうしても必要なお金が大きくなってしまい、なかなか手が出ません(絶版になっていることもしばしば)。しかしこのシステムであれば、今まで手が出なかった専門書も気軽に読める。しかもネットを通じて使えますから、利便性が高い。そして参照された分だけ、著作者には印税が支払われますので、閲覧者ばかりでなく、著作者にとっても利益は大きいのではないかと思います。
これは特に今後が楽しみなところです。現在は、専門用語で検索すれば、表題などでいくつかの専門書がひっかかる、程度ですが、より多くの専門書が読み放題の対象になり、かつ本の内容が全文検索で横断的にできて、その場で読み放題として参照できれば、それは情報収集の革命と言っても過言ではないでしょう。
現在はまだまだ使い物になるレベルとは言い難いですが、それでも一部、検索の幅を広げる、デジタル図書館的な使い方も多少はできます。
ラインナップの拡充と安定が課題
私の思う良い使い方はこんなところです。そのうえで課題となるのは、ラインナップの拡充といえます。というより、上述のやり方は、今のあまりよろしくないラインナップの中で、いかにして楽しむかを模索したものに過ぎません。読み放題サービスは、もっと気軽なものであるべきでしょうし、またAmazonもそれを目指していることでしょう。
そしてラインナップの拡充はもちろんですが、安定も大事です。現在読み放題対象となっている本が、いつ消えるかわからないという状況では、早く読まねばという心的圧迫感が生じます。それは気軽ではない。
実際、ベストセラーとなった読み放題本が、突如としてKindle Unlimitedから対象外にされたというニュースは多くの人を落胆させました。その多くは漫画や写真集などであったようです。現在も、特に漫画については、読み放題対象が非常に流動的である、という印象です。これはよろしくない。
Amazonはどうにも日本の漫画文化については無理解が目立ちます。まぁ、ジェフ・ベゾスは漫画を読まないのでしょう。特にKindleの設計は、世にある本とはつまり小説のことだと言わんばかりです。しかし、こうして実際に問題となり、また最近はKindleマンガモデルなども発売されていますから、少しずつ理解が進んでいくのではないでしょうか。
結局買いなのか(お得なのか)
さて、結論として、現状のKindle Unlimitedは買いなのか(お得なのか)。それは使い方次第と言えます。なんとなく加入しているだけだと無駄金になりかねないのは確かですが、自分から積極的に動けば、十分に元は取れるでしょう(個人的にはこの「元を取る」という考え方自体にも思うところがあるのですが、それはさておき)。
読み放題サービスは、DRMを前提とした電子書籍文化の終着駅であると思います。時間はかかるでしょうが、やがて私たちはその駅に辿り着く、というよりはたどり着かざるを得なくなるでしょう。いずれ、読み放題は人々にとって必須のサービスになるはず。
これは管理社会の側面があります。一社がすべての書籍を管理するような事態にしてはならない(気に入らない本を追放、など。現在もAmazonの独自基準で取り扱われない書籍はあります)。注意しなくてはなりません。また、読み放題を前提とした本作りがいかなるものか、まだまだ未知数です。必ずしも良いことばかりではないかもしれない。しかし、人々の利便性を大きく向上させ、知的活動にかかる時間的・経済的コストをぐっと抑える可能性も秘めているのも事実。
すべては使い方、使われ方次第です。Kindle Unlimiteには良いサービスとして成長してほしいし、また一ユーザーとしては、良い使い方を模索していきたいものです。
コメント