牛角の女性のみ食べ放題半額キャンペーンが物議を醸している。曰く、女性だけを割り引きするのは男性差別、ということだそうだ。なるほどー……。
参考:牛角が「女性半額セール」で大炎上…「男性差別じゃない」「非モテの僻み」と言い張る人たちの「お粗末すぎる擁護論」(御田寺 圭) | 現代ビジネス | 講談社(1/6)
男性差別にあたるか
まず僕の考えを言えば、女性のみ割引が男性差別にあたるかは、現時点において、必ずしも男性差別とは言えない、くらいかなぁ。将来的には明確に性差別とされる可能性もあると考える。まぁ実際、アメリカのカリフォルニアなどは既に性別で価格差をつけることを法律で禁じているらしいので、流れ的にはそっちなんでしょ。多分。
また、現時点で差別とは言い切れないものの、差別ではないとも言い切れないところがある。男性は普段の通常料金であるので、損害を被っていないから差別ではない、という意見もあるが、ここで問題になるのは、通常料金かどうかではなく、性別で扱いに差をつけることを合理的に説明できるか?である。で、厳密に考えると差別ということになってしまうかもしれない。性別で扱いを変えていることは事実だし、その妥当性の根拠と言われると厳しい。
これについて、牛角は「肉4皿分女性のほうが少ない」ことを根拠しているようだ(「焼き肉食べ放題“女性半額”は差別? 牛角キャンペーン“ネットで物議”」)。これは非常に筋が悪い。まず全体がわからないので、この絶対値は意味がない。仮に男性が100皿食べるなら女性は96皿食べることになり、半額の妥当性を説明できない。「半額」の根拠となるには男性8皿、女性4皿である必要があるが、恐らくそうではないために、総数を出していないのだろう。とても不誠実に見えるし、また、これが根拠だと肉体的には男性である「性自認が女性」の人を半額にする理由がなくなるという、さらに厄介な別の問題が生じる。期間限定であることも説明できない。また、年齢以外のファクタ、たとえば体格や年齢を考慮しないのに性別だけ考慮する合理性はなにかなど、面倒くさいツッコミはいくらでもできる。
以上より、牛角の言う肉4皿云々は言わないほうが良いレベルの詭弁である。ってか誰がどう見ても新規顧客層の開拓という商業的な合理性でしかないんだから素直にそういえばいいのにと思う。MNP初回キャンペーンと大して変わらないでしょ。
というのは外野の意見で、牛角が筋悪でも言い訳してしまった気持ちは理解できなくもない。商業上の合理性で扱いを変えることは必ずしも社会的に正当化されないからだ。たとえばアメリカで、客層に白人が少ないことに気づいた店が、白人にリーチするため「白人半額キャンペーン」をすればいったいどうなるだろうか。考えるまでもない。そして昨今の社会では、性差別もまた人種と同様に、商業上の合理性で扱えるを変えることを正当化しづらいものになっている。生物的な合理性さえも拒絶されがちではあるが、そちらのほうがまだマシという判断か。
まぁでもだからといって、ツッコミどころを増やすだけの筋悪な言い訳なら、しないほうがマシである。
牛角はどうすべきだったか
しかし、それでは批判に対して、牛角はどうすべきだったのだろうか。何も言うべきではなかった。少なくとも、妙な合理化を試みるべきではなかった。別にスープストックみたいに信念があったわけではないのだろうし(「スープストック、Twitter離乳食炎上の真相 「信念は曲げない」:日経クロストレンド」)。
今回、確かにSNSでは炎上してしまったけれど、逆に言うとSNSで炎上しただけとも言える。商業的には、一定の男性客から反感を買い、実際に足を遠のかせた可能性はあるものの、恐らく全体的には客足を伸ばしたのではなかろうか。であれば、何も傷口を広げる必要はないじゃないか。
もとより、牛角に男性差別の意図があったとは思えない。社会的にもこれまで、女性割引が差別と大騒ぎされるほどではなかったと思う。したがって、今回の炎上は予期しないことであっただろうから、今回については仕方ないとして、嵐が過ぎ去るのをただ待てばよかった。
この流れについて
とはいえ、今後は気をつけたほうがよさそうだ。恐らく、この流れはさらに厳しくなっていくと予想される。この流れとはどの流れだという話だが、まぁこの流れだよ。今回はなんだかんだSNSの炎上レベルで、恐らく全体としてはマーケティングとして受け入れられているだろうが、どっかで潮目が変わる、なんならもう変わっているのかもしれない。
炎上したこと自体が割と驚きでもある。まぁ今回の炎上についていえば、批判者に対する批判(っていうか中傷?)がけっこう強くてバトルになってしまったのはありそうで、SNSでちょっと検索したらわかるけれど、だいたい「非モテ乙www」なんだよね。これについては「牛角が「女性半額セール」で大炎上…「男性差別じゃない」「非モテの僻み」と言い張る人たちの「お粗末すぎる擁護論」(御田寺 圭) | 現代ビジネス | 講談社(1/6)」がよくまとまっていた。
全体的には、ヤフコメにあった以下のコメントが簡潔にまとまっているなと思われた。

ただ事はもうちょっと重いかなと思う。以前だったら炎上にもならなかっただろうし。バトルになるほど勢力が強くなっているのと、それを正当化する社会的な潮流がある。実際、こういうことにかけてはやたらと厳しい俺たちのカリフォルニアでは既に違法だという。
牛角の女性割引に疑問の声、アメリカでは既に「違法」 — 國武 悠人 | アゴラ 言論プラットフォーム
まぁぶっちゃけ、本質的には今までの女性差別問題に対する意趣返しだろうなとは思う。その意味では女子アナ臭い事件と根幹が同質なんやろね。

まぁ完全にお気持ち表明だった女子アナの件と違って、牛角の場合はマーケティングという明らかな目的があるから、世間的な理解度も高かったとのだろうけれど、結局これって社会的に余裕がないってことでもあるから、これからはマジでどうなるかわからんよ。
後で振り返った時、思えばこの事件は契機だったなぁと、そんな風に思い返されるんじゃなかろうか。
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