本書は起業の科学という本を、同著者がさらにかみくだいて説明するためにストーリー仕立てにしたもののようだ。内容は端的に言うと進研ゼミの漫画みたいな感じだが、用語について一通り使い方を知るのには良いアプローチに思える。
例によって、共有したいなと思ったところをメモする。
顧客課題の仮説検証
顧客の想定
新規事業において、顧客は基本的にアーリーアダプター。
- ペルソナの設定とエンパシーマップによる分析
- カスタマージャーニーによる顧客行動の推定
- インサイト(顧客の課題や欲求)の獲得
- インタビューで課題の質を高める
- ジョブシャドウウィングで行動分析
リーンキャンバス
顧客課題がよくわからない間に事業計画はたてらんないからリーンキャンバス使おうね、という話。
PMFへの道筋
PMFとはProduct Market Fitで、本書ではだいたいこれが終着点。
メンバ選定
メンバはスキルフィットよりカルチャーフィットを重視しようね、という話。
MVP
- 顧客フィードバック用MVP
- 事業コンセプトを背打つメイしたスライドやLP
- 事業コンセプトを伝えるイメージデザイン、動画
- 事業コンセプトを伝える広告バナーの出稿
- コンシェルジュMVP
- 人力によるサービス提供
- 人力と既存サービスを組み合わせたサービス提供
- プロダクトの見た目に関するフィードバックが得られるMVP
- プロトタイプ(モック)の作成
- UXに関するフィードバックが得られるMVP
- 実際に動くプロトタイプの作成
- 最も作り込んだMVP
- エンジニアが実装する開発本番用プロダクトに近いMVP
ビジネスモデルの型
- 中間プロセスの排除 ex: Airbnb
- バンドルを解いて最適化する ex: 新聞→スマートニュース、グノシー
- バラバラな情報を集約する ex: 価格.com
- 休眠資産の活用 ex: ラクサスのブランド品レンタル、Anycaのカーシェア
- 戦略的自由度モデル ex: Clubhouseのレコーディング、アーカイブ禁止
- 新しいコンビネーション ex: エアークローゼット
- タイムマシン ex: 別の業界に既存のビジネスモデルを当てはめる
- アービトラージ ex: レアジョブ 供給過多→供給不足へ市場のリソースをもってく
- ローエンド破壊モデル ex: QBハウス
- サービス化 ex: Adobe
5つの不
- 不認知
- 不信
- 不要
- 不適
- 不急
PMF4つの要因
- ユーザーのほしがるものができているか
- 基準としてよく知られているのはショーン・エリス・テストで40%以上のユーザがプロダクトがなくなると残念と答えるポイント、らしい
- 再現性の明文化
- 顧客の行動データに基づいて勝ち筋の導線を見つけられているか
- ユニットエコノミクス(顧客一人あたりの採算性)の健全化ができているか
所感
この手の本を読んだのは初めてではないので、たいていの用語は知っていたが、知らないものもいくつかあった。MVPを8つの類型にしていて、エンジニアの作るデモが最終段階であったが、いままで僕らが作ってきたMVPは、著者に言わせれば重たすぎるんだろうなぁ。また、事業計画をたてるタイミングがかなり後半だったことが印象的だった。
本書の感想を一言で言うと進研ゼミの漫画みたいだなぁというものではあるが、一点面白いのは、ストーリー内でも「主人公が納得のいく新規事業をおこすところまでで、成功したかどうかはわからない」というところだろうか。進研ゼミの漫画だったら確実に成績が上がりついでに恋人まで出来ているところだが、やはり事業の結果というのは最善を尽くしてもわからないし、物語仕立てですら軽々に大成功しましたみたいなストーリーにはできないのだな。まぁ、阿呆みたいになっちゃうよな。というよりは、テストや受験と違って、プロダクトには終わりがないから、かもしれない。
この手の本としては、色々な横文字を知られる読みやすい本であると思うし、また自身の事業の進め方にもいかせるところがあるのではなかろうか。
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