契約のお勉強: ITエンジニアの準委任契約

想定するケース

  • 個人事業主(フリーランス)のエンジニアが、準委任契約で業務委託を受ける

フリーランスの立場から、あるいはフリーランスを雇う立場から、適切な契約書を作るためのお勉強メモ。

エンジニアでも契約のことは勉強しておくべきだったと、三十代半ばも過ぎて思うのであった……。二十代の時から意識して勉強すべきだと思う……まぁでもなかなか実際に使わないとねぇ……。

目次

契約書のそもそも

なぜ契約書を作成するのか

そもそも何故契約書を作成するのか。これは突き詰めると、トラブルが生じたときに、第三者(=裁判官)にその責任を判断してもらうことにある。契約自体は口約束でも発生するが、第三者はその口約束が真実であることを判断できないので、契約書を作成する必要がある。第三者が判断するためのものであるから、独自の用語や業界用語を使うべきではない。

一般的に契約書には何を書くべきか

最終的には契約書の内容ですべてを判断されることになるので、すべてを書くべき、となる。なるが、現実的にそのすべてとはなんだ、ということになる。

  • 誰の権利or義務なのかを明確に
  • 法的な扱いが変わるので、契約の形態は明確に
    • 請負契約なのか、準委任契約なのか
      • 実態として雇用契約のような偽装請負になっていないか
  • テンプレートを使うのは良いが、そのまま使わない。きちんとすべての項目に精査する
    • 何が成果になるのか(業務の遂行なのか、成果物なのか……)
    • 支払い時期、支払う金
    • 損害賠償
  • 契約書自体が違法になっていないか
    • 対消費者では特定商取引法
    • 発注側が資本金1000万超の場合、下請法

お勉強リンク

業務委託契約における契約書

では実際に業務委託契約をするとして、どのようなことに留意して契約書を書けばいいのかについて。

業務委託契約と雇用契約と労働法

そもそも業務委託契約とは何かに立ち返る。これは業務の一部を自社の社員ではない第三者に委託するものといえる。この形態として、民放上は「雇用」「請負」「委任」のように分類されている(実際章立てもそうなっている)。その法的なポイントは何かといえば、労働法が適用されるか否かだ。雇用契約の場合は労働法の制約を受けるが、業務委託契約の場合は労働法が適用されない

これは委託する側からすれば、社会保険など労務の負担から免れ、また厳しい解雇規制など契約解消の困難もないという利点がある。その代わり、指揮できない。仕事のやり方については委託先の裁量となる。

一方で委託される側からすると、業務の遂行について大きな裁量と自由がある。その代わり労働法で保護されない。

逆に言うと、業務委託と言いながら実態として裁量がなく従業員のような扱いをすると、企業は雇用のリスクを回避しながら労働法の制約も免れるという美味しいところどりをしていることになる。それは偽装請負と判断される可能性がある。

請負契約と準委任契約

業務委託は大別すると、請負契約と準委任契約に分かれる。準委任契約について、準ではない委任契約があるのかとまず思うが、これはある。法律事務の遂行は委任契約にあたる。したがってこの記事では管轄外である。

請負契約と準委任契約は法的な取り扱いが異なるので、どちらの契約かは意識する必要がある。具体的には、請負契約は民法632条、準委任契約は民法656条に定められている。また、その前節は雇用なので、それも見て雇用と業務委託の違いについて、民法上の記述を確認したほうがよい。具体的には623〜656条にあたる。そんなに長くないので目をとおしておくべし。大丈夫、AWSのドキュメントより読みやすい。

ポイントをかいつまんでまとめると、請負契約は仕事の完成を約束する契約であり、準委任契約は業務の遂行を約束する契約である。たとえば弁護士の委任契約ならば、弁護を遂行するのであって、勝訴を約束するものではない、というとわかりやすいだろう。ITエンジニアの準委任契約は開発や保守業務は遂行する契約である。準委任契約でも成果物は求めてよいが、あくまで業務過程の一部と見做されることになる。

したがって、成果物に対する最終的な責任は、請負契約ならば請け負う側がもつが、準委任契約ならば委任する側がもつことになる。

ここだけ見ると、請負契約は発注側有利、準委任契約は受注側有利に思えるが、そう単純な話ではない。準委任契約の場合は善管注意義務が発生する。これはまぁ平たく言うとプロらしくベストを尽くせということで、完成させる責務こそないものの、そこに至る過程を適切に示し、無理なら無理で対策を講じなければならない。もっとも、善管注意義務に違反しているかどうかは個別に判断されることになり、「[技術]システム開発を請負でないとして仕事完成義務を否定しつつ善管注意義務違反が認められた裁判例|水野健司特許法律事務所」には善管注意義務違反が認められた判例、一部認められた判例、認められなかった判例がある。その内容はむつかしいが、いずれにせよ業務の遂行に対する責任はちゃんとあることは言える。

実際、システム開発において最初から完成品の仕様を決められることは稀である。仕様を決めること自体が専門的な業務だからだ。同業者が同業者に委託するとか、システムまるっと全部おまかせならば請負契約もありだろうが、ITエンジニアの場合準委任契約の適しているケースも多いだろう。

つまり、準委任契約と請負契約は有利とか不利という話では無く、あくまで業務の性質に基づいて決められるべきものだ。

雇用契約、委任契約、準委任契約、請負契約について図でまとめる。

graph LR dai(第三者に仕事を委託) subgraph 労働法の適用外: 指揮権なし: 成果に責任 ukeoi(請負契約) end subgraph 労働法の適用外: 指揮権なし: 善管注意義務 inin(委任契約) jun(準委任契約) end subgraph 労働法の適用: 指揮権あり koyou(雇用契約) end dai --->|雇用する| koyou dai --->|法律事務の業務遂行を委託| inin dai --->|法律事務以外の業務遂行を委託| jun dai --->|成果物を定義して委託| ukeoi

個人事業税の請負業にあたるか否か

個人事業主のITエンジニアという立場からすると、請負契約か準委任契約かは税制上の問題も絡む。個人事業主はほとんどの業種で個人事業税がかかり、請負業はその一つだ。請負契約の場合まず請負業に該当すると思われる。しかし、ITエンジニアの準委任契約が請負業に該当するのかは、判断が入るようだ。最終的には業務の実態から都道府県が判断することになるだろうが、準委任契約がメインのフリーランスであれば、個人事業税対象外の可能性がある。

契約書を作成する

以上を踏まえたうえで、実際の契約書を作成していきたい。

ドラフトはネット上にあるテンプレートや(リンク先でもひな形出してくれているところあり)、実際に使われた契約書をベースにするとよい。特に大企業の契約書なんかは当然法務によるリーガルチェックも受けているわけで、値千金の価値がある。大企業で働いている人は是非読もう(本業でも役立つかもしれない)。

テンプレートや他契約書をたたき台にしたうえで、項目を一つ一つ精査し、必要な項目を追加し、抜け漏れがないかをよく確認する。実際には、使い回せる基本的な契約書と、案件に特化した契約書を用意する、などもあるようだ。

最終的には、一度は弁護士のリーガルチェックを受けたいところ。

座学

テンプレートのあるところ

所感

働き初めて十数年、契約書の一つも書けない自分に絶望しつつ勉強した。契約は現代社会の基礎の一つなのだから、エンジニアでも勉強しておくべきだったと思った……。

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