早いもので、昨年9月30日よりEvernote Foodが使えなくなってからもう五ヶ月がたとうとしています。Evernote は最近あまり調子がよろしくないのか、広げていた風呂敷をたたみ始めています。
Evernote Food 亡き後
たしかに、Evernote は手を広げ過ぎていたかもしれません。ScanSnapとの連携くらいならまだしも、カバン、スタイラスペン…マーケットを見るたびに、どこに向かっているのだろうなぁ、と思ったものです。けれど、Evernote Foodは便利なアプリでした。
Evernoteは、アプリの標準機能で十分だから、と言っていましたが、それが表向きの言い訳であることを、アプリの愛好者であれば皆わかっていたでしょう。実際、同じことをEvernoteでやろうとしても、できません。時間帯によって、ランチやDinnerといった言葉を入れてくれる単純な機能が嬉しかった。位置情報からお店の情報を簡単に検索して入力できたのが嬉しかった。飯専用ノートブックにすぐに保存できるのが嬉しかった。デフォルトのノートブックは、決まっていますからねぇ…。大きな本体アプリと、小回りのきいた専用アプリという構成は、悪く無いと思うのですが。サードパーティ製のアプリも最近はあまり元気がありませんし。
SnapDishで代用できるか
そんなこんなであれこれと愚痴を言っていたら、有難いことにブログのコメント欄でSnapDishなるアプリを教えていただきました。これは飯に特化したSNS系のアプリですが、保存先にEvernoteを選べるので、Evernote Foodでやっていたようなこともできる、ということです。
まぁこういったものは使ってみなければわかりませんから、使ってみました。で、使用して何ヶ月かたっています。結論から言うと、使い方に注意すれば使えるが、SNS機能を使わないとなんだか肩身が狭い、といったところでしょうか。
アプリの使用で肩身が狭いとはなんだかわけがわかりませんが、それはこのアプリの本質がSNSであることに起因します。あくまで飯をテーマにしたSNSなのです。飯写真をとると、自動でサーバーにアップされ、それは公開されます。そしていいね!の代わりに「もぐもぐ」という拍手を他ユーザーからいただきます。つまり、人に見せることを前提にしています。
さて、Evernote Food を使っている人たちは、そういう人でしょうか。少なくとも、私はそうではありませんでした。私にとってEvernote Foodは、あくまで飯を題材にした日記でした。日記ですから、読者は自分だけです。したがって、食べかけだろうが、インスタントラーメンだろうが、平気で写真をとって、無秩序にあげていました。それが日記の日記たるところで、また素晴らしいところでもあります。
しかしながら、人に公開するSNSとなればそういうわけにはいきません。食べかけの写真をアップするのはいかがなものかと思いますし、コンビニ弁当をアップするのも気が引けます。別に見栄を張っているわけではなく、わざわざ人にお見せする意味がないからです。そんな写真を一瞬でもひと目にふれさせることは、迷惑行為になるのではないかとさえ思ってしまいます。まぁさすがにこれは考えすぎだと思いますが……。とにかく、Evernote Foodほど気軽ではない、とは言えるのではないでしょうか。
まぁ、手がないことはありません。公開した直後、写真を消せばよいのです。そうすれば、まぁ基本的にひと目に触れさせることなく、またEvernoteに投稿した写真は消されませんから、かなりEvernote Food的に使えます。時間によってタイトルが自動で入力されるし、位置情報を利用した場所検索もできます。撮影できる写真が一枚だけなのはちょっとアレですが。ただまぁ、やはり面倒臭いので、手軽さを求めてアプリを使っているはずなのに、これではわけがわからない、と思う気持ちがないでもなく、結果、Evernote本体アプリを使うこともしばしば。
また、一応アカウントを作っている以上、まったくアップしないのもなぁと思って、外食したときには消さずに残したりもしますが、そうすると不思議なことに、一つ二つはもぐもぐがつくのですね。すると、違うんだ、俺はそういうつもりじゃないんだよ、と、真っ当な使い方をして楽しんでいる人たちに申し訳がないような、なんだかいたたまれないような気持ちになります。いや、これは自分が気にしすぎだと思うのですが。
とにかく、なんといいますか、本来のターゲットではない外様感といいますか、なんだかそういう寂しい感じもするのです。というわけで、使ったり使わなかったり、という感じで、完全な代替には至っておりません。使い方次第、あるいは心がけ次第では、かなりEvernote Foodに近い使用感も得られると思います。
飯系のSNSという新たな世界を垣間見れたのは少し面白かったです。いずれ本気で料理をするようになったら、使ってみようか……そんな日は来るのかな。そういえば、最近LINEがFoodieとかいうアプリをリリースしたそうですねぇ……これもSNSなんだろうな。LINEだし。
余談:フリーミアムは幻か
ところで、一時期もてはやされたフリーミアムモデルの代表格であるEvernoteの失速は、一つ象徴的な事として受け止める向きもあるようです(参考:「元社員らに聞く「エバーノートはなぜ深刻な状況に陥ったのか」(前編)」、「岐路に立つエバーノート。新CEOで再起できるか(後編)」)。そうなのでしょうか。同じくフリーミアム代表格であるDropboxも、必ずしも順風満帆とはいっていないようです(参考:「苦闘中のDropbox、Mailboxを来年2月、Carouselを3月に閉鎖―生産性ツール開発に全力 | TechCrunch Japan」)。
日本のソシャゲで見られるガチャなど、品のないフリーミアムだと私は思っていますが、あれは今のところ(少なくとも経済的には)成功しているようですので、結局フリーミアムの行き着くところはあんなものなのかもしれません。そうであるとすれば、射幸心を煽るギャンブル性の強いもの、あるいは人が最も金を出す魔の領域であるエロス、あるいはその合わせ技がメインコンテンツとなるのでしょう。それは欧米人の厳しい感性からいけばあっという間に規制されてしまいそうです。既に規制されているという話も聞きますが、軽く調べてみるとどうにもノイズが多く、調べるのに骨が折れる領域です(そのこと自体が、魔の領域であることを示していますが)。
やはり、真っ当なのはEvernoteやDropboxのような健全かつ有益なサービスでしょう。無料でも便利に使え、さらに必要とする人間が適正な対価を支払うことで成り立つこれらのサービスは、金はないが意志と能力を持った学生や若い人にとって、強い味方です。やがて働きだし、自分で使える金がまとまって入るようになったら、より高い利便性と、恩返しの意味も込めて対価を払えばよい。なんとか、うまくいかないものだろうか。
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