どんなものでも、運用は難しいものです。そう言われれば否定する人はいないでしょう。しかし、その実際のところをわかっているかと言われると、果たしてどうでしょうか。少なくとも、学生時分の私には、その「難しさ」を具体的に想像することはできなかったと思います。実際に自分が運用する立場になって初めて、それが一筋縄ではいかないことなのだと知りました。
大量生産される市販品の素晴らしさ
PCは本当に素晴らしい。箱を開けて電源ボタンを投入すれば即起動し、すぐに使い始めることができます。時折うまくいかないものもあり、そういうものは初期不良と呼ばれますが、そうあることではありません。日の目を見なかった多くの試作と失敗作の礎の上に成り立っているのでしょう。大量生産だからこそできることです。多くの人が使うから、マニュアルも充実しており、ネット上には個人のノウハウが溢れています。
非大量生産物を運用するということ
逆に言うと、大量生産でないものはそうもいかないということです。もしくは、普通の人がしないようなマニアックな使い方をする場合も、色々と試行錯誤が必要になります。数が出ない専門機材や、マニアックな機能の一品物なんて、使う側も一緒に開発するようなものです。
具体的には、まず、動作確認。本当に動くのかどうか、から始まります。ここでたいてい躓きます。動かないことはザラですし、動いたとしても想定していた動きではない、というのもよくある話。一部の特殊な機能の使い方がわからない、などもあります。ここで、長きにわたるメーカーとのやりとりが始まります。
次に、安定性の確認。モノが動いたとして、それが安定して動くことを確認しなければなりません。ここでもまた躓きます。予期せぬエラーが頻発したり、挙動が安定しなかったり。これは比較的、普通の市販品でもよく問題になります。自作PCや電子工作を嗜む人ならば、熱問題や埃問題に起因するトラブルなどはお馴染みですし、そんな電脳的なものでなくても、ちょっとした振動や衝撃で壊れてしまうとか、湿気で木造の筐体が撓んでしまうなど、使い始めてわかるトラブルがあるということは、誰しも想像できることだと思います。そういった問題を、できる限り洗い出す。
そして、動作の監視。運用中は正常に動作していることを監視しなくてはなりません。常に正常にあるべき動作をしていることが確認できなければ。となると、たとえば人員を配置して確認手順を考えたり、モニタリング用のセンサを取り付けたりなど、ここでまた一仕事必要になります。
最後に、トラブル対応。監視するだけではなく、いざ何かが起きたら、即座に対応できるような体制を整えることが必要です。どんなに安定稼働を確認していても、現実に運用を始めれば何かとトラブルが起きるもので、それにどう対応するのか、予め考えておかないと、せっかくここまで頑張ってきたものが、すべておじゃんになってしまうような事態にだってなりかねません。
「運用する」とはつまり、上記を一つ一つ大事にこなすことだと思います。それでもなお、問題は尽きない。運用が難しいとは、そういうことです。ここではモノを例にあげましたが、いわゆる「システム」と言われるようなものも、似たような対応が必要なのでしょう。
「すぐ使える」という有り難さ
大量生産される市販品は、その過程で多くのテストをこなしていますので、動作が問題となることはあまりありませんし、その機能に関する情報も十分あります。それがいかに有難いことか。「すぐ使える」は決して当たり前のことではないのだということを痛感します。私が今使っているこのPCも、いったいどれだけの亡骸の上に作られたものなのだろうと思うと、なにか畏敬の念さえわいてくる。
でもだからこそ、運用することの難しさが、普通に大量生産品に囲まれて生活していると、どうしてもわかりづらいのだとも思います。小さい頃から工作が趣味だったりすると、いいんだろうな。しかしイマドキそういう人は珍しいだろうな。かくいう私自身がそうではなかったし。自分が痛みと共にようやくわかりかけてきたことを、経験していない人にわかってもらうのは並大抵ではないよなぁと、というか無理だよなぁと、また悩みが尽きない今日この頃です。
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