ウォークスルー改札というのがあるらしい

ウォークスルー改札、というのがあるらしい。

Suicaをポケットに入れたまま改札通過、実装の技術的課題をクリア【鉄道技術展レポート】 - CNET Japan

これは端的に言えば手ぶらで改札を通れる、というものだ。技術的にはミリ波を使っており、ミリ波のアンテナを内蔵したカードケースにsuicaを装着する仕組みらしい。

図示するとこうなる。

graph LR subgraph カードケース suica(suica) ant(ケース) end kaisatsu(改札) suica ---|NFC| ant ant ---|ミリ波| kaisatsu

ほーんと思いながら読んでいたのだが、以下の課題を見てずっこけてしまった。

課題としては、カードケースの駆動に電源が必要であり、そのためのバッテリをカードケースは内蔵している。バッテリは駆動時間の問題があるため、カードケースに電源オン/オフのスイッチがあり、ウォークスルー改札の通過時にはオンの状態にしておく必要がある。

するってぇと何かい、これ使うのは、タッチすら煩わしいと思っているが、カードケースの充電は忘れずに行い、電源のON/OFFはマメにする、そんな謎の地球人になるのかい。

いやまぁ、理屈としては、手の不自由な人や旅行などで両手が塞がっている人には便利、とは言えるかもしれない。しかし充電が必要、というのはあまりにも大きな失点で、普通の人は「タッチの煩わしさ」と「カードケースの固定と充電と電池管理の煩わしさ」を天秤にかけることになる。正直タッチを選ぶ人が多いんじゃなかろうか。少なくとも僕はそう。

また、モノは複雑にするほどメンテナンスは難しくなり、故障しやすくなる。これはモノはシンプルにするほどメンテナンスは容易で故障もしづらい、と言っているのと同義で、まぁ原理的にそうなる。

ウォークスルー改札の実現は、システム的にはタッチ決済に中間が一つ増えた格好で、どうあがいても複雑。またモバイルsuicaなど思えば通常のタッチ決済を捨てることもできないだろう。つまり運用という観点では、非常に厳しい格好だ。

まぁもちろん未来のために実証実験、というのは悪いことではないし、技術的な挑戦も意義あることだとは思うので、別にやるなとは言わないのだが、これが未来の改札、と言われると大いに違和感がある。

なによりJRは公共交通機関であって、その開発コストは当然市民にかかってくるものだから、あまり妙なことをされると、なんだかなぁという気分になるのはまぁ仕方ないだろう。そんなことより東海道新幹線を安くしてくれ(これはJR東海)。

まぁなんでもそうなんだが、世の中にはトレードオフというものがある。全てが良くなる、というのは原理的にない。ただ悪くなる部分が運用的に問題なければ、それは改善といえる。たとえばタッチ決済は、紙の切符よりも柔軟性がないし、またシステムは複雑で、ユーザ側の準備コストも大きい一方で、ユーザは運賃を調べなくて良くなり、切符を買うよりはやく、駅員さんも本当に必要な人にだけサポートのリソースを割くことができる。全体としてメリットがデメリットを大きく上回るものだと言える。

最近は、全体としてそのトレードオフが無視されているような感じがある。特に運用コストが無視されている、というかな。たとえば無駄に高機能なエアコンは故障率が上がりメンテナンスがたいへんなだけ、とか。

昔と違って機能的なところが飽和したせいで、変に改善するとトレードオフの負の側面のほうが大きい、というパターンが増えてきたことのかもしれない。また、運用コストの増大は企業側からすると必ずしもデメリットではない(仕事が増える)ので、軽視されるのもあるだろう。

なんだろうな。資本主義と技術と社会の本当の便益が、いよいよ噛み合わなくなってきたような、そんな感じがある。

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