老人は勿論、子供も別にどうでもいい、という実感

政府は今更になって子育て支援がどうのと言っているが、もちろんこれはいつもの集金のための方便であって、子供を楯にしてより多くの税金を取ろうという、ここ数十年続いている我が国のスキームを続けているに過ぎない。強いて言うならば、社会保障とか老人のためという言葉が逆効果になりつつあるのだろうという推察が、社会的情勢の変化という観点では多少注目に値するかもしれない。

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独身から見た少子化対策は実感のない利他

ネットにおいては、「どうせ子供のためになんか使われず、また公金チューチューするだけでしょ」という冷ややかな声が大きいように思うが、まぁこれは僕の観測範囲が偏っていることも大いにあるだろう。一般的には取られることに慣れきってしまった、あるいは既に取られるスキームから抜け出している世代においては、「子供のため」という耳心地のよさでまだまだ騙されるのかもしれない。

しかしそれでも、この「子育て」「育児」という名目も、政府が思うほどには効果を発揮しないのではなかろうか。というのも、実感を持って子育てや育児を重要だと思える人の数がもう減ってしまっているからだ。多少露悪的な感じがするので、言うのはやや憚られる面もあるが、かくいう僕もその一人である。

30代後半にあって独り身という属性がまず大きい。生涯未婚率にカウントされるのも間近にあって、正直結婚についてはもうだいたい諦めているし、結婚できても子供まで……となると、両親には申し訳ないが、現実的に考えてもうだいぶ厳しいだろう。

つまり、子育ても育児も直接的には他人事なのである。もちろん理屈として、次世代がいないと社会は支えられないというのはもっともなことだとは思う。理性的に考えて、昨今の若年層の経済的な厳しさを思えば、一定程度の支援は必要だろう、という風に考えられる。家庭を持った同僚の助けにもなるかもしれない。したがって、社会として次世代を作り育成していくことについての支援は否定しない。ただ、そこに実感はない。

ついでに言えば、独身男性の平均寿命が67歳であるというデータなど見るにつけ、社会保障も平均的には払うだけ払って死ぬのだなと思うだけではなく、自分の人生がその程度の先までしかないのだとすれば、今更少子化対策をいくら頑張ったところで、たとえそれが効果を発揮したとしても、自分の時代ではなさそうだ、などと思えるわけだ。そして、別に今現時点で子供や若者と交流があるわけでもない。

つまり、少子化対策とは、一定年齢を超えた独身(特に男性)にとっては、もはや実感のない利他なのである。

今を生きるのに必死なので

そんな利他を求められる人たちがどのように呼ばれているかと言えば、悲惨なことに一時期はキモくて金のないオッサン(KKO)などと呼称されていた。今でも好んで使っている人はいるだろう。ただこれはいくらなんでも差別的で普通の人には使いづらいと思われ、最近は弱者男性という言葉に置き換えられて語られることが多いようだ。また、そのように自認している人も多い。このような状況で、果たして社会的貢献のために少子化対策を社会として取り組むべきだと実感をもって思えるだろうか。

僕自身は別に金には困っていない。現在の労働環境も別に悪くはない。しかし昔はそうではなかった。僕にも人生の中で結婚について考えた時期があったが、それができなかったことの一つには、経済的、キャリア的な不安定さがあった。まぁもちろんそれだけではないのだが、一つの要因であったことは確かだ。別に社会に対して恨みがあることはないが、しかし社会は厳しかったな、というのは実感としてある。家庭を築くことはできなかったものの、なんとか経済的・キャリア的な不安定さからは抜け出せたので、僕はまだ運が良いほうだろう。

別に弱者なんとかに限らず、同じような感覚が、様々な理由で独身となった人たち(もちろん女性も含む)にはあるんじゃなかろうか。社会のせいだと言う気はないが、社会のおかげさまでと言う気にもなれない。まぁ、ハッキリと社会を恨んでいるという人も少なからずいるかもしれないが。

また、これは子供の有無にかかわらず、今の現役世代全体に通底する諦観かもしれない。失われた30年で、現役世代の社会に対する帰属意識はだいぶ失われたものと思う。

結局、今を生きるのに必死なわけだ。頼れるのは今までもそしてこれからも自分だけだという、実感を伴った心境の中で、今になって「異次元の少子化対策」などといいとこのボンボンに言われても、いいから明日の税金・保険料を下げろ以外の感想がないのである。

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