「Dropbox Plusを買うか買うまいか – 或る阿呆の記」の記事でDropbox Plusを買うか買わないか悩んでいたが、結局買ってしまった。決め手はなんだったのか覚えていないが、自宅のシステムを思いっきり替えたかったのだろうと思う。一言で言うと、NASを使わないようにしようと考えたのだ。なにより、データを整理するきっかけにしたかった。
一ヶ月ほどあれこれいじっていて、思ったよりも便利なところもあれば、不便なところもあり、まだNASは置いたままであるが、理屈の上では完全移行もできそうだ。
NASいらずへの道
Dropbox Plusを購入した。これにより、僕は生涯Dropboxにお金を払い続けることになる……とは言い過ぎで、もちろん嫌になったらNASに出戻ることもできるが、まぁ恐らくそれはないだろう。
Dropbox Plusは最大で2TBまでデータを保存できる。2TB程度ならば、(以前に比べれば)安くなった外付けSSDでまかなえる。まぁ安くなったとはいえ、現在市場価格で25,000円ほどはするので、ストレージに金を払う文化のない人はもちろん、ハードディスクの価格と比較してしまえば、もちろん高い。しかしポータブルSSDの2TBが25,000円は、自分の感覚では「そんなに安くなったのか」といったところだ。
2TBもあれば、人ひとりのデータの保管庫としては十分に過ぎる。僕のNASは3TBほどデータがあったが、これを機にデータの整理をするのも良いと思った。明らかに、HDの肥やしになっているデータが多すぎる。ゴミデータに本当に必要なデータが埋もれているような気がしていた。一人の人間が管理できるデータの容量は、せいぜい1TB程度じゃなかろうかと思う今日この頃である。
データを消すのは心的エネルギーが必要だが、新しいシステムを構築し運用するため、と思えば頑張れるというものだ。
ということで、NASにあったデータを大量削除しつつ、外付けSSDに移動させた。
便利になったこと
実際使ってみて、便利だと思ったことを書いていく。
差分バックアップ
Dropboxはファイルを誤って削除しても、期限内であれば復元させることができる。おっちょこちょいの自分は既に何度かこの機能に助けられた。
復元機能があるからこそ、心理的に安心して消せるということもわかった。どうしても必要なら後で復元させればいい、と思っていらないだろうデータを消すのである。そしてそういうデータはたいてい、消してから5秒後には持っていたことさえ忘れているものだ。
ローカルのスピード
内部ストレージではなく外付けSSDの中に置いているので、純粋にローカルとは言えないかもしれないが、ネットワーク越しではないという程度の意味である。
これは非常に大きい。特にMacはなんだか知らないがSambaサーバーとのやりとりがWindowsと比較してやけに遅かった(ある程度対策はしているがそれでも遅い「MacとReadyNAS 104の通信速度が遅い時の対処法(SMB) – 或る阿呆の記」)。なので、NASにあるデータにアクセスするのは若干気重だったのだが、遠慮なくアクセスできるようになった。
災害対策
これまでは、火事や地震などで物理的にハードディスクを破損したらどうしようもなかった。かといって遠隔地にバックアップメディアを置くのもしんどい話だ。実家などを使えばできないことはないのだが、こういうことで目に見える費用をケチって他人(家族といえど他人である)を絡ませると結局高くつくものだ。
が、これからは災害の心配はほぼしなくてよい。恐らくDropboxの分散ストレージが破壊される可能性は、僕の家がどうかなる可能性より遥かに低い。まぁゼロとは言えないのだが、分散ストレージが逝くってことはなんだか地球がヤバイ気がするし、明日車に轢かれる心配でもしたほうがまだしも現実的である。
……そこまでして保存しておくべきデータか?というのは置いといて。
対応するアプリケーションの豊富さ
Dropboxともなれば、ファイルを扱うアプリケーションの多くが対応している。たとえば自分はComicGlassというiOSアプリケーションで漫画を読むことが多いが、当然Dropboxには対応しているので、どこからでもクラウド書庫にアクセスできるようになった。
いやまぁその程度のことはNASでもちゃんとやればできるのだが、ちゃんとやるのが面倒くさいものである。昔は興味本位でVPNサーバーをたてたこともあったが(そしてそれは出張の時などに役立った)、今となっては面倒臭さが勝る。
外付けSSDを買う口実になった
安くなったとはいえやはり2TBのSSDとなると絶対的にはそこそこのお値段がするので、一庶民がサクッとポチれるものではない。尻込みする自分の背中を押してくれた。おかげでSSDを買う勇気を持てた。
何を言っているのか分かる人だけ分かればよいと思っている。
データを捨てるきっかけになった
便利になったとは違うかもしれないが、一番良かったと思うのはデータを捨てられたことである。
前述のように僕は3TBほどデータを溜め込んでいたが……3TBっていうのは、人一人が持つには手に余るものデータ量なのだなと、よくわかった。もう絶対に見ない動画とか、音楽とか、本とか、それは思い出かもしれないし、データに質量はないかもしれないけれど、それでもやっぱりノイズなのはたしかなんだなぁ、と。そして、ノイズは大切なものを見えづらくするんだなぁ、と。
デジタル情報も、整理されていないといけないんだな、と強く思う。
まだNASを捨てきれないところ
Dropboxはやはり便利だ次世代だなどと思う一方で、まだNASを処分できていない。その理由について書き連ねる。
LAN内ストリーミング
僕はiPadからストリーミングで動画を再生したり書籍を読んだりするが、さすがにこればかりはLAN内ストリーミングのほうがよかった。まぁLANと比べるのは酷というものだが……。
だが、LAN内ストリーミングは僕にとってはなくてはならないものである。特に動画のストリーミングは是非とも必要だ。
まぁ僕はMac miniの電源を基本的に落とさないので、Macにアクセスすればよい話なのだが、どういうわけかそれが現状うまくいっていない。だがうまくいかないはずはないので、もうちょっと頑張ればそのうち快適に使えるはずなんだが……。
バックアップ
物理的な障害の心配は確かにほとんどなくなったと言ってよいが、それはそれとして、Dropboxが暴走して、勝手にファイルを削除するなどという暴挙に出る可能性はないでもない。また、やはりシステムの不具合というのは起こりうるものだから、ファイルが破壊される可能性だってあるだろう。また、ローカル側のストレージが中途半端に破損して、ファイルが壊れたりした場合、いったいどうなってしまうのか、という不安もある。
なので、結局バックアップはいるのである。まだバックアップの運用が決まっていないので、バックアップ代わりにNASが残っている。
データ
なんだかんだ言って、まだ完全に捨てきれていない。多分、ほとんど気持ちの問題なのはわかっている。わかっているが、時間が必要なんだ。
人間が管理できるデータなんてそんなに多くない
とまぁつらつら書いてきたが、もうしばらくしたら完全移行の目処が立つと思う。いまのところ、LAN内ストリーミングがうまくいっていないのがネックだが、できないはずはないし。
今回のこの大移行は、「人間が管理できるデータはせいぜい1TB」という考えに基づいて行っている(そう思うのは僕が動画を扱わないから、というのもあるだろう)。NASは大容量が手軽に実現できてしまうので、ついついなんでもかんでもぶちこんでしまう。で、放置する。放置されたデータはノイズとなり、本当に必要なものを隠す。
断捨離やミニマリズムは極端な思想だと思うが、参考になることはあるところはあって、それはアナログだけではなくデジタルでも言えることだと思う。見えづらいだけに、アナログよりも根は深く本質に近いかもしれない。
昔は、データをどれだけ増やせるかばかりを考えていたが、最近は、データをどれだけ減らせるかばかり考えている。なんだかんだで、それだけの時間を生きてきた、ということかもしれない。
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