石破茂は左派系野党支持層にとって本当に都合が良かったのか、あるいは高市早苗は本当に都合が悪いのか

ついに石破茂が自民党総裁を辞任することとなった。辞任の報道が流れても、SNSでは「本当か?」と疑われていて笑った。この根本的な信用のされなさは、彼の政権の本質であったなぁと思う。

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誤報問題について

辞任報道がSNSで「本当か?」と疑われていたのは、つい先々月の誤報騒ぎに端を発しているだろう。読売新聞と毎日新聞で、それぞれ石破退陣の誤報騒ぎがあった。

あの時左派系の人と思われる人たちは激怒し、「戦後最大の誤報」みたいなことまで言っている人までいて、さすがにこれが最大になるほど戦後が平和だったとは思えないけれど、まぁ左派の言葉のインフレは今に始まったことではないか。

まぁ確かに、あれは事実として誤報となったわけだけれど、一方で、読売と毎日という、政治的にまったく異なる立場でそれぞれ立て続けにやらかした、ということを見ると、果たしてマスメディアだけの問題だったのだろうか、と僕は思う。

まず読売は保守系ではあるけれど、それ以上に与党自民党に親和的だし、その総裁である石破茂を積極的に貶したいわけではないだろう。また、毎日は反自民かもしれないが、石破茂の思想とは非常に親和的で、彼らもまた、石破茂を積極的に貶めたいとは思えない。

なのでそれぞれ、マスメディアとして、「スクープつかんだぞ!うおおおお」となったのだろうし、読売なんか号外まで出したのは、情報の確度に自信もあったんだろう。

その情報提供ルートがなんだったのかは謎だが、まさか間者を首相のベッド下に送ったわけでもなし、政権に近いところから、なのはそうだろう。そしてそれが、たとえば情報操作を目的としたものだったかは甚だ怪しい。そもそも情報操作ならもうちょっと真偽を検証しづらい別の話をするだろうし。こんなん石破茂の違いますの一言で終わるじゃん。終わった。

なので、関係者は本当に全員そうなると思われたのだろうし、大手メディア二社で誤報騒ぎとなったということは、それは恐らく、従来の政治慣習においては当然とそう解される、というような情報だったのではなかろうか。まぁこれは政治とマスメディアが阿吽の呼吸で動いていたことを示唆しているので、それで良いのか、という議論はあるにせよ、しかし石破茂が従来の常識・慣習とは別のところで動いていた、とは言えるんじゃないかな。

その結果として、もはや伝統的なマスメディアによる報道も信用できない、という状況に拍車がかかり、いよいよ国民からの不信は大きくなった。これはマスコミはもちろんだが、当の政権にとっても、信用されている状況ならともかく、選挙に負けたのになんだか居座っている、という状況ではますます不信感を募らせることになっただろう。

この結果としての不信感は、まさに石破政権そのものであった、と思う。

本当に都合が良かったのか?

そんな石破茂だが、左派からの人気は強い。これについては、なぜか自分たちにとって都合が良い敵のリーダだから、ということで、実際これは「石破茂は首相に相応しいわけではないが、石破政権は支持する」という謎の結果を生み出した。

なので、石破茂の辞任を左派系野党支持層は残念がっている様子が見られた。

しかし、僕はこれについても疑問に思うところがある。石破茂は、本当に左派にとって都合が良かったと言えるのだろうか。

事実として、今参政党が大きく躍進している。参院選では大幅に議席を伸ばし、選挙後に至っては政党支持率で国民民主党を抜き去り野党第一党になったと複数報道機関より報じられた。この参政党の躍進は、左派にとって酷い現実のはずだ。

しかし、この参政党を躍進を支えた第一人者の一人こそ、石破茂だったのではなかろうか。実際、自民党総裁であったという事実は、多くの自民党支持者を離れさせた。彼らはどこに行ったのだろう?立憲民主党?そんなわけはない。国民民主党?そうかもしれない。だがそれだけではなく、間違いなく、彼らの向かった先の一つは参政党だ。

つまり、石破茂が自民党総裁であったからこそ、参政党はここまで躍進できた、という見方ができる

これは同様の逆説を生む。現在、石破茂の後任が高市早苗になることを左派は悪夢だと考えているだろう。しかし、恐らくそれ以上に高市早苗総裁を恐れているのは参政党だろう。参政党は保守層の受け皿になっているはずだが、自民党が高市早苗のもとに再び保守の流れになるのであれば、彼らが自民党に戻ってしまう恐れがある。少なくとも、今いる自民党保守層から支持層の奪取は明らかに石破政権時より難しくなるだろう。

つまり、左派が嫌がる高市早苗によって、恐らくもっと嫌なのではないかと思われる参政党の躍進を抑えられる。逆に、左派の支持した石破茂によって、左派の嫌いな参政党は躍進できた。

まぁ政治は複雑なので、これがすべてだという気はさらさらないのだが、目先の目に見える損得が、実はそうでもなかった、というのはプラスにもマイナスにも言えることだと思う

ゲームが変わっている

これは逆も言えて、保守層にとって石破茂は悪く、高市早苗は良い、とはわからないんじゃないか。保守層は別に自民党を支持している人だけではない。元から参政党や日本保守党を支持していたならば、自民党の体たらくによって議席を得ることができた。また彼らのみならず、保守層でも自民党の過半数割れを歓迎している人は存外多い。衆参両院で過半数割れは、或る意味石破茂のなしえた快挙である。とすると、保守層にとって石破政権は必ずしも悪くなかった、かもしれない。

また、高市早苗が本当に保守層に答えるかはわからないと思う。彼女は期待されながらも、石破政権下で特に存在感を示さなかった。時折、政権批判とも取れるリップサービスのようなものはあったが、彼女が具体的に何かしたとは、ついぞ聞かないままに石破茂は辞任した。口の悪いネット民からは「ガス抜き女王」などと呼ばれていた。石破政権下でガスを抜いていた女王が、晴れて名実ともに女王になれば覚醒するのだろうか。

ただまぁ自民党にとっていえば、確かに石破茂は自民党をだいぶぶっ壊しただろうし、高市早苗のほうが支持を伸ばせるだろう。だが逆に言えば、自民党以外にとってはどちらになってもそれぞれ複雑な政治力学でどうなるかわからない面がある

つまり、自民党総裁はどこまでも自民党の事情である。所詮余所様のお家事情なのだから、そんなことに一喜一憂せず、自分がやるべきと信じることをやるべきだ。相手の足を引っ張ったつもりが、引っ張る勢いで別の何かを押し上げてしまった、というのは誰も楽しくないだろう。 だから足を引っ張るより、自分の足を伸ばすことを考えた方がよい。

これは綺麗事に聞こえるかもしれんのだが、しかし多分現実的にそうするしかないんじゃないかねぇ。今、ゲームが変わっている。1vs1のゼロサムゲームから、バトルロワイヤルになりつつある。エンジニアの言葉で言うなら、一対一の設計でよかったものが多対多へと仕様が変わりつつある。

相手を撃つ間に後ろから撃たれる状況では、兎にも角にも、先ず自分、というのが、論理的にも最適なのではないか

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