自分のデータは自分で守れ、雲の上で守ってもらえると思うな

クラウドという言葉が定着してもう10年以上経過する。僕はバズワードに過ぎないと思っていたのだが、思いのほか概念として定着したようだ。クラウドとはとどのつまり「他社にデータを預けても良い仕組み」そして「それをクールだとする社会的な思い込み」の総称だ。

本来、データを預けるのは多くの人にとって受け入れがたい仕組みである。データとは財産であり、その財産を他人に預けるなど正気の沙汰ではない。

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狂気の沙汰を正気の沙汰に

実際、自分の財を第三者に預けるなど、本来的には狂気の沙汰だと思われるが、その狂気を正気ということにする商売はある。金融業なんかその典型だろう。狂気の沙汰を正気の沙汰とするために、彼らはありもしない信用を唱え、勝手なことはしませんよと言うわけだが、僕らがそれを信用するのは、彼らが信頼に足る人物・組織だからではなく、彼らが勝手にやりづらい制度が社会的にあり、また彼らも彼らで一応実績を積み上げてきた、という現実による。

その意味で、クラウドサービスは金融業と近い面がある。彼らもまた、データという顧客の財を預かるサービスだ。そのサービスが使われるほどに、彼らもまた儲かる。まぁ金融業よりは不動産業に近いかもしれない。その性質のために、最近はGAFAの基盤上でサービスを展開する事業者をデジタル小作人などと呼ぶ人もいる。

個人的には、デジタル小作人のような見方はかなり一面的な見方だと思うが、しかし本質的に金融業や不動産業と近い側面があることは事実だ。

つまり、クラウドサービスというのはその本質に、財を預けても良いという信用があり、それをベースにしたみかじめ商売である

その警戒されるべき本質を、クラウドというぼんやりした流行語によって見えづらくしている。いまや、クラウドを理解しないものは遅れているという社会的な空気さえ醸成されている。クラウドは、ビジネスのうえで非常に便利な言葉だった。だから定着したのだと思う。

クラウドサービスもまた本質は狂気

クラウドサービスはその本質に財を預ける狂気がある。まぁこれはいささか極端な議論かもしれない。クラウドサービスにも色々あって、コンテナの実行基盤やAWS LambdaのようなFaaSは、財を預けているという感覚は薄いだろう。実際、実行基盤として利用している、その利用料を払っている、というのはユーザとしての素直な感覚である。しかしそれでもやはり、本質としてプログラムという財を預ける信用なくしてできないことは確かだ。

Dropboxのようなオンライン・ストレージサービスはクラウドの中でも特に財を預けるという感覚が強いものもある。オンライン・ストレージサービスはクラウドの先駆けとも言えるもので、クラウドという言葉流行る前に出来たモノだから、いまでもオンライン・ストレージサービスと言われる。しかしその本質はクラウドに包括されるものだ。

オンライン・ストレージサービスは信用できない、という言説は昔からあった。実際僕の考えも錯綜している、当ブログを「Dropbox」で検索すれば、NASを主体にしたり、Dropboxを主体にしたりと、あれこれ試行錯誤していることがわかる。

まぁなんだかんだでDropbox Plusの有料会員は続けているという事実から、僕はDropboxを信用していると考えられる。実際、Dropboxを使い始めてからかれこれ15年たっていると思うが、特に問題が起きたことはない。

しかしそれも、今の契約が終わるまでで、次の契約更新はしないつもりだ。まぁまだあと1年くらい残っているのだが、今その準備を進めているところで、既に大方のデータをバックアップとしてNASに引っ越している。あと数ヶ月かけて少しずつDropboxの依存度を下げていくつもりである。

理由として、Dropboxというよりクラウドサービス全体に対する個人的な信用の低下や、サービス全体の肥大化、また、代替手段の技術の向上がある。

手元の運用が楽になった

信用の低下といっても、元から大して信用していたわけではない。オンライン・ストレージサービスの場合は、昔からプラットフォーマー側の基準による勝手な垢バン問題があった。子供とのお風呂写真が、欧米諸国の勝手な倫理基準で児童ポルノ扱いされBANされた、という話は実際に聞く。独身である僕は特に子供の裸写真のようなものは持っていないが、あちらの勝手な基準で勝手に垢バンされる、というリスクは常に警戒してきた。そのために、僕はDropboxと使いながらもずっと外付けハードディスクなどにデータの退避を怠ることはなかった。

だったら何故Dropboxを使っているのかと言えば、純粋に便利だからである。オンライン・ストレージサービスとはただデータを雲の上に預けるだけではない。雲の上に預けたデータを、様々なアプリケーションで連携できるところに、クラウドの妙味がある。たとえばDropboxにある音楽データをストリーミング再生するアプリなどは、身近な応用例だろう。

同じ事をオンプレでやろうとしたら、昔はだいぶ苦労したものだ。サーバーの構築とメンテ、そしてインターネット公開のためのネットワーク環境の構築、セキュリティ設定。なので、僕は現実的な選択肢として、Dropboxのようなサービスを利用してきた。

しかし、今はこれがだいぶ楽にできる。サーバについては、なんといってもコンテナが大きい。コンテナの良いところは、環境のスクラップ&ビルドが滅茶苦茶楽なところだ。設定をコードで書けるのもよい。Linuxマシンを用意して、何かあったらOSの再インストールから……なんてやらなてくいい。そしてネットワークについては、Cloudflareの存在が大きい。特にCloudflare Tunnelは、ネットワーク公開を楽かつセキュアにできる現実的な選択肢だ。

まぁ結局DockerやCloudflareに依存していると言えばそれはそのとおりで、特にCloudflareについてはデータ監視のリスクもあるが、しかし同様のことができるサービスはあるわけだし、なにより財を預けているわけではないから、依存度としてクラウドサービスの比ではない。重要なことは、依存しないことだ。依存しないとは、データという人質を取られないことである。

依存度を下げた運用は昔から可能ではあったけれど、労力を含むコストが大きかった。今、それがかなり現実的なレベルにまで下がっている(といっても非IT技術者には厳しいとは思う)。むしろ、自分の使い方に合わせてソフトウェアを組み合わせることができるという点では、お仕着せのサービスよりもよほど使いやすい。

地震雷火事よりも親父(プラットフォーマー)のリスクが大きい

運用について非常に楽になったのはそうだとして、もう一つ問題がある。それは、オンプレ環境が破壊されたらどうするのか問題だ。これはバックアップを取ればいいじゃないかという程度の話ではなく、自宅が火事になったり、あるいは大災害に巻き込まれたらどうするのか、というレベルの話だ。

これについては、どうしようもない。まぁデータくらいなら、遠方の家族の家にたまにハードディスクをおかせてもらえば、すべてがゼロになるという事態は防げるかもしれない。まぁ可能なら、遠隔地にNASをおいてネットワーク越しにバックアップなりできればいいと思う。

しかしそんなことをするなら、クラウドサービスを使えばいいじゃないかという話になるだろう。実際僕もその観点から、クラウドサービスの利用について肯定的だったし、今も業務においては使う。ってか最近個人開発で公開したWebアプリもフツーにAWSのDynamoDBにデータ保存してる。認証はCognito使ってる。

が、プライベートではなるべく避けたい、という感じだ。その理由は簡単で、災害でデータがぶっ壊れるリスクよりも、プラットフォーマーの謎の振る舞いでデータが破壊されたりアクセスできなくなったりするリスクの方が大きいと思うからだ。

プライベートの使い方って非常に広範で、それこそ家族の思い出から個人的ポルノ大全まで色々あり、しかもそのデータは自分の人生が続く限り保持されてほしいものだ。これは通常のサービスよりも実は要件が厳しい。サービスは特定の目的でしか使われないし、なによりサービスの寿命と自分の寿命では、だいたいサービスの寿命のほうが短い

だから特定のサービスならば、クラウド利用はリスクとベネフィットを天秤にかければ、利用する、という選択は多くの場合正しいと思う。まぁコストに見合えばだが。

しかしプライベートの場合、クラウドはいかにも危なっかしい。確かに地震雷火事には強いだろうが、親父ことプラットフォーマーの気まぐれが怖い。地震雷火事よりも、親父のほうがよほど身近な脅威であり、しかもその親父はアースクエイク・サンダー・ファイアー一通り使える。こんな怖い親父がいるか。

雲の上の頑固親父にデータを預けられない

ということで、現実的に手元の運用コストが下がったことと、雲の上の頑固親父の横暴が酷くなる一方の昨今、とてもそんな親父に僕の大事なデータを預けられねぇなぁという気持ちが強くなっている。

実際、プライベートでは脱クラウドを進めている。まぁさすがに2025年にオンプレはどうなのって話もあるが、その場合でも、最近はVPSのバランスの良さを再評価している。コストも値頃だし、スペックの範囲で好き勝手できるし。コンテナ使えるアプリなら移植性も高いし。そもそもクラウドサービス使わなきゃいけないほど非機能が求められる状況ってあんまりないんだよな、僕の場合、というのもあるが。

そんなわけで、気がつくとMac mini 2018はコンテナサーバとしてなんか常に十数個のサーバが立ち上がっている。まぁめんどくさいこともあるけれど、そういえばサーバって楽しかったぁ、なんてことも思う。こんな楽しいものは、雲の上より自分の部屋にあったほうがよい。そんな360度回ったことを思う今日この頃だ。

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