インフレについて考えるために、俺たちのジンバブエについて見ていた。
俺たちのジンバブエ・ドル(1980-2009)
ジンバブエドルはもはやネットミームと化したわけだが、その経緯についてまとめたい。
まず1980年に、白人政権のローデシア(動画でローレシアではないとキレ気味にツッコミしていて笑った)から黒人によるジンバブエ共和国が誕生し、そのときにローデシア・ドルに代わってジンバブエ・ドルができた。最初1ジンバブエドルは1.47ドルの価値、とされ、また通貨としては安定していたようだ。アフリカの穀物庫と呼ばれるほど、安定した基幹産業もあったらしい。
それがどうしてボロカスになったのか?AIが言うことには、まず最初の引き金は1997年の退役軍人への退職金のため金を刷りまくったことで、1997年11月14日(ブラックフライデー)、4時間で70%以上の暴落をしたらしい。ビットコインかよ。そうしないといけないほど、当時のムガベ大統領は政治的に追い込まれていたんだとさ。独立戦争を戦った退役軍人の支持を失うと、政権の正当性が揺らぐというわけだ。しかしこれで通貨の信用が大きく毀損された。
そんで2000年からの農地改革ってのはつまり、農地経営していた白人を追い出したってことだが、農業経営のノウハウやら技術やらは白人が持っていたので、基幹産業の農業自体が壊滅したという流れ。つまり外貨獲得の手段に大きな打撃があった。
それなのに誰も欲しがらないジンバブエ・ドルを刷りまくったことによって、俺たちの知る100兆ジンバブエドルが爆誕するわけだ。
それは2009年に自国通貨の発行を停止して、ドルなどを公式に使うことにするまで続いた。
RTGS, Real-Time Gross Settlement ドル(2019-2024)
自由に刷れないドルが使われるようになったことで、インフレは止まったらしいが、今度はドルが足りない。ドルを獲得する手段がない。
それでできたのがボンドノートという自称ドルと同じ貨幣で、それから2019年にRTGSドルと性懲りも無くドルだと言い張るものを正式に法定通貨としたらしい(ちなみに2017年のクーデターでムガベ大統領94歳は職を追われる、翌年大往生)。このRTGS, Real-Time Gross Settlementだが、これは金融の用語である即時グロス決済で、日銀にも解説ページがある(「RTGS(即時グロス決済)とは何ですか? : 日本銀行 Bank of Japan」)。
即時グロス決済ってなんぞ?となるわけだが、これはその前のネット決済と比べるとよい。以前は1日の終わりに貸借の差し引きの差額をうごかしていたが(たとえばA→Bに100,B→Aに90ならA→Bに10となる)、すべての決済を個別決済(グロス決済)で即時やる、というものらしい。
まぁ要はデジタル通貨やんけという話で、RTGSドルもRTGSというからには、仕組み的には確かに送金すれば即時決済されるようだが、それでドルと同等という根拠は何もない。つまり即時決済されるドルと同等ということになっているナニカでしかない。
これはなんだか、エンジニア的に理解するならHTTPSで暗号化された経路でダウンロードされるマルウェアみたいな感じだ。サーバが侵されている。そう考えると先進諸国の技術の世界でも本質的に似たようなことをしているわけで、笑えないかもしれない。
当然のようにインフレした。
ZiG, Zimbabwe Gold, 2024-
ジンバブエは鉱物資源が豊富で、2022年に金貨を発行するなどした。これは一定程度うまくいったが、1オンス金貨の価格は時価だからコインパレスでも見て調べてくれしにたい。俺も金貨欲しい!!!!!!!!まぁ最近日本でも銅の10円玉が原価割れしそうと言われている昨今(「5円玉の「時価」5円超え? 10円玉も9円弱、原料の銅が最高値 - 日本経済新聞」)、ジンバブエ国民に金貨などもてるはずもなく……。
しかしこの金貨は一定程度はうまくいったらしい。それでなのかどうかしらないが、2024年5月、今度は突然ZiG、ジンバブエ・ゴールドを出してきた。これは何かというと、ゴールドを裏付けにした通貨、ということになる。つまり金本位体制!金本位体制じゃないか!
といっても、じゃあZiGもって銀行にいったらゴールドにしてくれんのか?といったらしないのだろうし、これも結局は「RTGSドルはドルと同等!」をs/RTGSドル/ZiG/にreplaceしただけに見える。ってか当の政府が外貨を稼いだら外貨で納税しろっていう状態らしい。Zimbabwe Revenue Authorityはジンバブエの税務署らしいが、ここによると

All payments should be done on time through banks in the currency in which income was earned into ZIMRA Single Bank Account.
このthe currency in which incomeが所得を得た通貨、ということで、つまりドルを稼いだらドルで納めろ、という状態になるらしい。それだとZiGが信用できないのは政府公認みたいなもんだなぁ。ってかAIに探してもらったんだけどよく見つけてきたな。
さらにKPMGのレポートを見つけてきて、これのレポート(「https://assets.kpmg.com/content/dam/kpmg/us/pdf/2024/07/tnf-zimbabwe-jul26-2024.pdf」)に以下の記述がある。
If QPDS (Quarterly Income Tax payments) estimate results in 50% or more of income in foreign currency then pay 50% of the QPDS in local currency at the official closing rate on the previous day on which payment was remitted. (with effect from 01 August 2024)
なに言っているのかわかんないので訳してもらうと
「(法人の)四半期所得税(QPD)の見積もりにおいて、所得の50%以上が外貨である場合、QPDの5割を現地通貨(ZiG)で支払い、残りの5割を外貨で支払わなければならない。現地通貨で支払う際の換算レートは、送金日の前日の公式終値とする。(2024年8月1日より施行)」
AIすげぇな。
こんな感じなので、誰よりもまず政府が外貨クレクレ厨になっているので、こんな状態では信用もへったくれもあったものではない。
というか、こんだけ鉱物資源があってハイパーインフレ繰り返しているの、本当に政府が腐っているとしか言えない。いや、むしろ鉱物資源があるからこそ、無理な農地改革や退職金の過大な支払いをしてしまったんだろうか。ダイヤモンド鉱山をうまく使えたボツワナとの対比がエグい。日本も何もなかったからこそ成功したのかもしれない。今は……。
国家に信用がない
こうして見ていくと、ジンバブエに足りないのはまず信用といえる。国家に信用がない。ハイパーインフレを繰り返して、都度都度通貨を押し付けている。
国家の信用がないのは、その政治の腐敗が一番だろう。鉱物資源がある以上、それでハイパーインフレになるんだったら、そりゃ資源の奪い合いになってるよな。まぁ資源の呪いというやつかね。人間というのはままならんね。しかしボツワナはダイヤモンドをうまく使ってるのだし、これが資質の差か……。
その結果として産業も育たないのだろう。日本目線だとまず産業だが、ジンバブエの場合鉱物資源があるから外貨獲得手段は実際あるんよな。それなのに困窮してるってのは完全に腐敗よね。自国の産業を育てていない。
まぁ、支配層からすると、その必要がないんだろう。他国からしても、優秀な人材を吸い上げて鉱物資源もいただければ別にそれでいいわけで、今時リスクを侵して侵略する意味もない。その結果がジンバブエと思うと、平和ってなんだろうと思う。今の日本を見ていると、吸い上げる資源がなくてよかったかもしれない。
あまりにも極限過ぎて、さすがに衰退国家とはいえ日本の参考にはならんか、と思った。このジンバブエの中で外貨を持っている人たちがどうやって身を守っているのか?は、今後日本円の信用が毀損された時に何が起きるかを示唆するものかもしれないので、折を見てまた調べたい。

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