生成AIと人間の仕事について ChatGPT、Stable Diffusion…

生成AIでまともなイラスト出力ができるようになって久しい。最初の頃はジョーク画像生成器のような扱いだったが、どうも本格的にすごい絵が出来るらしいということがわかるにつれ、世間の見る目も多少変わってきたように感じている。

実際、自分も最初はあまり関心がなく、ちょっと遊んでおしまいだったのだが、進化の速度は凄まじく、しばらくしてからやりなおしてみると、これが本当に面白かった。おかげで「IT革命以来の20年ぶりの革命がきた」と非常に興奮しているところだ。しかしながら、世間では必ずしもポジティブな見方ばかりではなく、むしろはっきりと反AIを掲げて規制を促す人たちもいる。

まぁ、色々な意見があることはそりゃそうだろう。ここでは僕の生成AIに対する考え方について、つらつらと書いていきたい。

目次

生成AI何するものぞ

まず、生成AIとはどんなものかだが、これは別に今までのものと本質的には対して変わらない。指示を入力として、マシンが処理をし、出力を返す。どんな機械もそうだし、生成AIもそうだ。ただその結果が、今までとは段違いに素晴らしい。Alexaはかわいい阿呆だが、これが本当に「人間より賢いのではないか」と思わせられるほどのものになっている。

具体的な実装として、言語においてはChatGPT、絵においてはMidjourneyやStable Diffusionといったサービス・ソフトウェアが有名だ。これらを使うことで、今まで経験を積んだプロの人間が必要だった多くのことが、多くの人にとって手の届くものとなる可能性が出てきた。

これは素晴らしいことのように思えるが、すべての人がそう感じているわけではない。特にEUは拒絶反応が強いようで、イタリアなんか一時ChatGPTを国をあげて規制し、OpenAIの対応で規制を緩めたものの、EUはさらに無理難題をAI業界に突きつけようとしている。

AI学習データの開示を義務づける法案がEUで提出される - GIGAZINE

日本は比較的AIについてオープンな姿勢だと思うが、鳥取県の知事は「ちゃんとジーミーチー」などという意味不明な供述のもと使用を禁止するなど、一部では否定的な動きもある。

鳥取県知事、議会でのChatGPTの使用を禁止へ 横須賀市は積極活用方針 | 財経新聞

市井においても、特にTwitterなんかはオタク文化が強いせいか、AIイラストについて否定的なグループは少なからず存在し、実際生成AIによるイラスト投稿のキャンペーンを実施したスシローには批判の声も多く集まったようだ。

スシロー公式「サーモン寿司」をAIに描いてもらう → まさかの常識の先を行く結果に「斬新!」「笑わせてもらった」の声(1/2 ページ) - ねとらぼ

特にAIイラストについては、Twitterではどうもなんだか一部界隈では煽り合いというか、スキャンダル合戦みたいな様相を呈しており、見ていて悲しくなる。しかも、政治家が騒動について取り上げることもあり、そうなるとリアルの世界にも影響を与えかねない。なんだかなぁ。これはちょっと、本質的じゃないよなぁ。

実際にAIイラストをやってみる

何をするにしても、まずは理解すること、理解しようとすることが大事だ。生成AIが市井に影響力を持ち始めたのは最近で、結局「やったことない人」が一番多いため、色々と誤解されているように思う。

どんなことも、まずはやってみるのが一番良い。たとえば「無限に美麗なイラストが簡単に作れてしまう」という噂のAIイラストにしてみても、実際にやってみるとそうでもないことがわかる。

ちょっとやってみよう。恐らくもっとも需要のある絵の一つであろう、「美少女の絵」を描こうとしてみる。少女の絵を描くには簡単だ。AIに「1girl」と指示すればよい。その結果がこれだ。

いわゆる一つの1girl

なるほど、これは確かに1girlだ。世の中のものを1girlとそうでないものにわけるなら、1girlだろう。AIもそう考えたに違いない。が「そう、これが欲しかった」と思う人類はいないだろう。

ここで、自分が欲しかった絵は何かについて考えることになる。なんだろうか。絵はアニメ調がいいだろうか。髪の毛は短いほうがよいか。黒髪。スカートよりはワンピースっぽいほうがいい。

色々と考えて色々と整える。

うん、まぁ……。近くはなったか……。

やけに陰影のついた黒服の少女を眺めながら、「いったい僕はAIに何を描いてほしかったんだろうか」と思いを馳せる。何がほしいのか、AIも、そして自分さえもわからない。その事実に直面する。

この何がほしいのかわからない問題が第一の問題だ(これは恐らく原理的に解決不可能)。

第二の問題はAIに意図が伝わらない問題である。たとえば「hands up」を指示した場合、以下のような絵が出たりする。

hands up…?

これはhands upと言っていいのだろうか。hands upとは何かについては、少なくともGoogle先生のほうがよく知っているようだ。

そう、これがhands up。このように、AIは必ずしもこちらの意図を正確に汲んでくれるわけではない。ただこれについては、指示の仕方の問題も大いにある。そこで、AIによりよい理解をさせるための技術、プロンプトエンジニアリング、なんて言葉も生まれている。

だがそれよりも、上の絵を見て思うのは「いやそれ以前に指がキモいんだけど」というものだろう。これが第3の問題だ。自分のやりたいことは明確で、AIに意図も伝わっているが、うまく表現できないという問題。これは非常に大胆なラーメンの食べ方をする少女たちのイラストなど、Twitterでも一時面白がられていたかと思う。

という感じで、AIイラストには色々と課題があり、Twitterなどで時折流れてくる「AIイラストに革命!これでAIイラストの問題は全部解決!!手書きはオワコン!!!」みたいなのは、上にあげた第2、第3の問題の一部について、特定の条件下で解決できる可能性があるものに過ぎず、すべて煽りを目的とした誇張表現である。

しかし現状の課題を一つずつ解決する技術の積み重ねで、AIイラストはこれからも進化を続けていくことは間違いない。進化につれて、利用する側に求められる技術も高まるかもしれないが(実は既にけっこう敷居が高くなっている)、それでも、今まで絵が描けなかった人たちにもできる、というインパクトは凄まじい。

ただし、どこまでいっても、「自分は何がほしいのか」という根源的な第一の問題については、原理的に永久に解決不可能であり、かつ実はこれがもっとも重要な問題である。したがって、表現者としての絵描きが消えることはない。また手描きの技術は役立たないどころか、AIの種にしたり出力の結果を正しく評価したり補正したり、超強力な技術であり続ける。

絵も文字も音も、デジタルでは0と1

ここでは絵を例にあげたが、文字だろうが音だろうがすべて同じ問題を抱えている。AIにとって、マシンにとって、デジタルの世界ですべては0と1の並びに過ぎない。0と1の並びに意味を見出しているのは我々人間である。我々人間にとって異なるものでも、マシンにとっては必ずしもそうではない。文字も絵も音もすべては繋がっている。

つまり、我々人間にとって違うからといって、文字や絵、音といった区別で安易に語るべきではない。AIイラストに問題を感じたとしても、イラストだけを取り上げてAIを語ることは適切ではない。たとえば現状は合法である「イラストの学習の是非」を問題とする場合、イラストだけではなく、あらゆる文字や音などの情報も含めた学習の是非という問題になるだろう。

また、0と1の並びである生成物について、AIによるものかどうか見極められるという前提に立つべきではない。むしろ、できないということを前提に考えなくてはならない。というより、それができそうにないと思われているからこそ問題だと感じられているはずだ。

とすると、AIの出力のみを規制することは原理的に出来ず(見分けられないから)、規制の影響は我々人間による生成物にも及ぶだろうということを肝に銘じなくてはならない。

まぁ、ディープフェイクで人を騙すのはAIを使っていようが使っていまいがダメなのだし、著作権の侵害だってAI使ってなければOKなんてことはない。AI使ってやっちゃダメなことは、AI使ってなくてもやっちゃダメという、至極当然の話である。

生成AIというエポックメイキング

このように考えると、実は生成AIの登場で新たに出てきた問題というのは、実はないのではないかと思える。ただ、圧倒的な量の供給手段が現実化したことにより、今まで考えずに済んでいたことについて、改めて考える必要は出てきたのかもしれない。

一つだけ確かなことは、時代が変わろうとしているということだ。時代が変われば、形も変わる。今までとまったく同じようにいかないのはそうだろう。実際、既に一部のプロが失職しているというニュースもある。私はソフトウェア技術者だが、同僚は口を揃えて「自分の仕事はなくなるだろう」と半分冗談、しかし半分は本気で言っている。そう思う。

その一方で、新たな需要もある。AIを使った新しい仕事やビジネスが求められている。我々は無限の課題を抱えており、仕事が尽きることはない。AIに出来ることはAIにまかせて、我々はさらに価値のあることができるはずだ。

AIをどう使わないかではなく、どう使うかについて、僕は考えていきたい。

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