特定の記事を論うようなのは避けたいんだけれど、ちょっとさすがにどうかなぁと思えたので。
「出社義務」への理不尽な反抗? ”コーヒーバッジング”日本でも流行か? 会社はどうすべきか? #エキスパートトピ(横山信弘) - エキスパート - Yahoo!ニュース
これの内容はいつもの出社vsリモートワークなんだけれど、この記事はそれについて論じるに値しない。ブログのネタになりそうだなと思って読んだのに、内容以前の問題で、ネタにもなりはしなかった。でも時間をかけて読んでしまって悔しいので、本当の問題点を記事にする。
アメリカの雇用の現実:AIに仕事を奪われている中で
記事の内容は、コロナ禍明けの出社回帰について、一部労働者による出社した後コーヒー飲んで帰る(出退勤スタンプの事実だけ作って帰る)という運動を指しているようで、それを「静かな抵抗」と位置づけ、企業は看過してはいけないと警鐘を鳴らすものだ。
まぁこれ自体は別に大した話でもない。ただ、今このタイミングで、というところに、まずちょっと引っかかった。というのも、既に出社回帰が叫ばれてから随分と経過するし、何より今はAIの台頭によって、特にIT系においては既に「仕事を奪われている」と現在進行形になっているようだったからだ(「AIは若年労働者の雇用を奪っている:米研究結果 | WIRED.jp」)。
ITエンジニアは、フルリモートやハイブリッドが許される職種の筆頭であろうし、またその他の職種にしても、人間の身体がオフィスで必ずしも必要ないものは、だいたいAIとの熾烈な競争が既に始まっているはず。また、8月の雇用統計がほとんど見ないレベルで予想よりも滅茶苦茶悪くて(「米雇用者数、2.2万人増にとどまる-失業率は2021年以来の高水準 - Bloomberg」)、市場についてかなり懸念がある状態だ。
なので、「このタイミングでこんなことやれるほど、アメリカの雇用市場で彼らは強いのか?」という疑問が先に立った。
アメリカそれはシリコンバレーやニューヨーク
で、記事を読んでみると、以下のような記述がある。
「コーヒーバッジング」のトレンドも去ることはなさそうだ。アメリカではシリコンバレーやニューヨークなど都市部でハイブリッドワーカーの58%がすでに実践。
突然沸いて出てきた58%の出典が不明だったが、恐らく記事内でリンクが張られているハフポストの以下の記事からと思われる。
アメリカの労働者2000人を対象にした同社の2023の調査によると、出社とリモートのハイブリッドワークをしている社員の58%が「コーヒーバッジングをしている」と答え、さらに8%が「試してみたい」と回答している。
ハイブリッドワークは働き方の選択肢の1つとして永続的な地位を築き始めており、「コーヒーバッジング」のトレンドもまだ去ることはなさそうだ。LinkedInユーザー1568人を対象に2024年6月に行われた調査では、19%がまだ「コーヒーバッジングをしている」と答えている。
出社義務への静かな戦略。コーヒー飲んですぐ退社「コーヒーバッジング」がアメリカで流行中 | ハフポスト これからの経済
ハフポストからさらにリンクを飛ぼうとすると「Oops」だったので、調査の詳細はわからないが、2023年にアメリカの労働者2000人を対象にした調査、らしい。

いずれにせよ、2023年とは2年前だし、またハフポストの「アメリカの労働者」が記事では「シリコンバレーやニューヨークなど都市部」としれっと置き換わっており、なんだそれは、という感じ。
さらに2024年6月のLinkedInユーザ1568人の調査では、19%となっている。もちろん調査手法も母集団も何もかも違うので単純に比較はできないが、2023年調査の58%のみ取り上げて、2024年調査の19%をガン無視、は非常に恣意的だと感じられる。
そもそも、それらは2023-2024年のことであって、トランプ関税で右往左往し、先月は予想を大幅に下回る2021年以来の最悪の失業率、しかもそれはコロナような一過性の者ではなく構造的なものと思われ、異様な株高だけが最後の花火への期待のように高まっていく2025年9月に、いったいどうして言えるのか、という疑問がある。
そういう疑問があったので僕はこの記事を読んだわけだが、まずそもそも数字の扱い方に閉口し、それ以上のことはとても話す気になれない。
帰ってきたエキスパートシステム
もはや問題は、リモートワークの是非でも出社の是非でもない。これが「エキスパート」の名のもとに拡散しているという事実のほうだ。SNSではリモートワークに対する俺の持論のリプで溢れていたし、僕もその一人になる気でいたんだが、正直こんな不誠実な記事では盛り上がることもできない。
これがエキスパートなら、確かにAIでいいと思われるのも致し方ないのかもしれない。
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