恐らく皆が感じているだろう、デジタル的なものに対する違和感を、あれこれとまとめた本です。本書は2014年の本ですけれど、まぁそれから今に至るまで、取り立てて大きなことは起きていませんので、まぁ問題ないと思います。
デジタルの違和感
本書に書かれていることにピンとくるような人たちにとっては、特に目新しいことは書かれているわけではなく、あくまでまとめられた本です。まぁ、広範な話題について取り上げられているので、知らないトピックもあるかもしれません。ただ、この手の話題に目新しさを感じる人は、後述しますが、読み方に注意が必要だと思います。
おおまかな話
おおまかに、以下の様なトピックが取り上げられています。
- SNSで感じる孤独感
- 蔓延る誤情報
- IoT、ウェアラブル、自動運転
- 単純作業だけではなく知的な仕事にも進出するロボット
- 仮想国家、海賊党、仮想通貨ビットコイン
- ブレイン・マシン・インターフェース、脳のハッキング
- デジタル認知症、外部脳
- Amazonがレコメンドできないセレンディピティ
- デジタルを活用した教育
全体的に、デジタルで便利になったはずだし、実際便利になっていると思うんだけれど、いつまでも忙しいし、別に賢くなった気もしないなぁとか、トイレでスマホをいじっている時とかにふと感じる違和感のあれこれを、色々なトピックを取り上げつつ語る、みたいな感じです。これだけまとまると、本として成り立つのですね。
今よく考えるべきことと、頭の片隅においておけばよいこと
ちょっとややこしいなぁと思うのは、SNSで繋がっていないと感じる孤独感や、情報の洪水で集中できないことなどは、まさに今起きている問題なのですが、これがブレイン・マシン・インターフェースや、知的な職業に進出するロボットの話となると、まだかなり未来感があることで、それらを混ぜて書くと、今起きていることと、これから起きる「かも」しれないことの境目が曖昧にならないかな、と。いや、わかっている人はよいのですが、本書は一般向けですし、なんとなく興味をもって読んだオッサンなんかは、必要以上にデジタルに警戒心を抱いてしまわんかなぁと、ちょっと心配です。
こういう話のとき、一つの目安になるのは、実際の固有名詞が使われているかどうか、だと思うのです。SNSではFacebook、Twitter、仮想通貨の話では、ビットコイン、仮想国家の話では、ドイツ海賊党、といった具合です。一方、たとえばブレイン・マシン・インターフェースについては、せいぜい著名な研究者の名前が出るくらいで、これはつまり、まだまだ研究段階ということです。まったく考えなくてよいとは言いませんが、今まさに起きていることとは、考える次元が異なるはず。
なので、これらの話題が並列気味に書かれている印象を受けたため、私としてはちょっと煽り過ぎかなぁと思うところがあります。そんな大仰な話では、ないと思うのですが。もうちょっと、具体例が多ければ、また違った印象を受けたかもしれません。
まぁ、各論はともかくとしても、大筋としてこの本に書かれているのは、デジタルの過度な利用が人間の考える時間を奪っている、人間は考えなきゃいけない、デジタルは補助として活用しよう、ということだと思います。それは、まぁ、その通りです。そう思います、私も。というか、たいていの人は、賛同するのではないでしょうか。けっこう、穏当な結論です。しかし、それって、つまり、何をすることなんでしょうね…。

コメント