まだジャストシステムにアカウントが残っていたことに感動した。いや、そりゃそうかもしれないんだけどさ。正直もう作ったことさえ忘れていたね。でも確かに昔使っていたのだから、アカウントはそりゃあるんだよな。あの頃はまだパスワードマネージャを使っていなかったのか、昔使い回していたあまり強度の高くないパスワードを使っていた。懐かしい。
楽天の50倍わかりづらいJust Systemのサイトから請求履歴を探し出すと、最後にATOKを使ったのは2013年の5月だったらしい。そうか、もうそんなにか……。あの頃はGoogleがいろいろなものに手を出し始めていて、もう全部Googleでいいんじゃないかと思わされていた頃だ。MacはリーズナブルでWindowsマシンに対しても価格的に競争力があった。なんとも隔世の感がある。またATOKを契約することになるとはあの頃は思わなかったなぁ。
Google日本語入力に不満があったのか?
もう10年ばかりGoogle日本語入力を使ってきている。大きな不満があったわけではなかった。多分きっかけは、「久しぶりにATOKを使ったら最高だった!!! - ケータイ Watch」の記事を読んだことだろう。以前だったら「まぁ昔は僕も使っていたな」と思ったくらいで素通りした気がする。ただ、今回はどういうわけかやけに引っかかって、その後いろいろと調べたりした。僕の中でどういう心境の変化があったのだろうか。
昔、ATOKからGoogle日本語入力にうつった理由
以前にATOKをやめた時は、どんなことを考えていたっけ。そう思ってブログ内を検索してみると、果たして、10年前の記事が引っかかってちょっと感動した。

当時僕はまだLivedoor Blogを使っていたし、掲示板文化から抜け切れていなかったため、見出しも何もなく、改行タグを駆使した記事になっている。アメブロみたいだ。なんとも懐かしい。ほんの10年前、僕はこんなだったか。まぁ他の記事を見るとちゃんと構造的に書いているものもあるので、ちゃんとやろうと思えばそりゃやれたと思うが、今だったらどんなやっつけ記事でもこういう書き方はしないだろう。
ATOKは不安定だった
記事内ではATOKに対していくつかの不満を述べている。そういえば確かにATOK Syncは不安定だったし、またしばしばATOKは暴走してCPUを熱くしていた。これについて「特に不満というほどではない」となぜか書いているが、あまり意識できていなかっただけで、思いっきり不満要因の一つだったのではないか。おそらく自分が不満に感じていることすら感じられないほどに、慣れすぎていた。不安定さは自覚できていなくても、大きな不満となっていることが多い。だが、無自覚なだけで、やはりその実不満はあるのだ。後になって、「ああ、僕は不満だったんだ」と気づくことはよくある。まさに、今がそうだね。
ATOK放送禁止用語が辞書になくて不便(今も)
差別用語、まぁ平たく言うと放送禁止用語が辞書にない問題については、「そうだっけ?」と思って調べたところ、確かにそのようで、また現在も特に事情は変わっていないようだった。(参考記事: ATOKによる「不快語・表現など」への方針について思うこと - 35歳からの中二病エンジニア)。実際、確かに使えない。
ただこれについては、学習能力がきちんと高くなっているため、あまり気にならないのではないかとも思えた。別に辞書登録してもいいし。当時の僕は「ポリシーが気に入らない」と言っており、これは今もそう思う。まぁ、理解できない方針ではないし、また今となってはこれくらいでいちいち目くじらたてていたら大手のサービスは何も使えない、とも思うようになった。僕もすっかり調教されたかな。まぁでも、先にも述べたとおり、学習能力が高くなっている今ならば、実用上あまり困らないのではないかと思われる。
恐らくなんだけれど、僕が本当に不満に思ったのは、放送禁止用語に限らず、Google日本語入力と比べて語彙が貧弱だったということじゃないだろうか。というよりは、Google日本語入力が豊富過ぎたのかもしれないけれど。流行言葉が変換候補に出てくるのは衝撃的だったよ。語彙で負けてるのに、意味不明な制約している場合かおまえは、というのが僕の不満だったのではないかなぁ。
Google日本語入力のリアルタイム変換(サジェスト)は便利だった
一方Google日本語入力のよいところとして、リアルタイム変換をあげている。これはいわゆる予測変換、つまり恐らくサジェストのことだと思われるが、当時はこのように呼ばれていたのだろうか。覚えてない。今リアルタイム変換というと、ことえりのライブ変換のことだと思われそうだ。個人的にはライブ変換はいくらなんでもお節介が過ぎるので、使い勝手が悪いと思っている。
しかしそうか、そういえば、ATOKは当時これがなかったんだな。これは確かに痛い。というより、Google日本語入力が衝撃的だったんだろうな。今となっては当たり前にある機能だけれど、当時は画期的だったか。スマホはどうだったかな。スマホでは元からあったっけ?文字入力に困難さがあるスマホから着想を得ていたりするのかな。
今はさすがにATOKも推測変換を出すようになっている。この機能は、実は今回移行した決め手になったのではないかと思う。思うというのは、僕自身契約に踏み切った自分自身の心情について分析できていないからだ(なので今こうして記事を書いている)。
最近のGoogle日本語入力は、このサジェストがどういうわけかタコで、ちっとも学習してくれず、たとえば当サイトのタイトル「或る阿呆の記」すら覚えてくれない。正確には、直後は覚えてくれているんだけれど、しばらくするとまたすぐ忘れてしまっている。これがめっちゃ不便。昔は覚えてくれていたように思うんだけどなぁ。どうだっけか。なんか、以前よりも全体的に使いづらくなった気がするんだよなぁGoogle日本語入力……。
一方、ATOKはちゃんと覚えてくれる。先に挙げた放送禁止用語も何度か入力したらちゃんと覚えてくれる笑
今、ATOKのほうがGoogle日本語入力より優秀だと思った
いろいろと書いたが、とどのつまり、10年前の僕はGoogle日本語入力のほうがATOKよりも優秀だと感じたのだろう。恐らく僕にとってそれは正しい感覚だった。そして今回はその逆で、ATOKのほうがGoogle日本語入力よりも優秀だと感じたわけだ。
10年前に僕が感じた不満を、今のATOKはだいたい解消しているように思う。しばらく使っていた限りでは、ATOKは安定して動いており、暴走することもない。それだけではなく、ATOKは日本語入力システムとして着実に進化を遂げていた。「改善された辞書 + 高い学習能力 + 推測変換」のコンボによって、変換効率が今のGoogle日本語入力を凌駕している。
一方で、Google日本語入力は10年前から何も変わらなかったように思う。学習能力に至っては、むしろ下がったのではないだろうか。いい加減僕のサイト名くらい辞書登録しなくても覚えてくれないもんか……辞書登録しても、それをすべてのPCでやらされるとか面倒くさすぎる。ATOK Syncならそんな手間はかからない。
というか、クラウド同期の機能こそいかにもGoogleらしい機能だと思うんだが、どういうわけか、一時期ベータとして機能搭載していたものの、お蔵入りになってしまったようだ。どう考えても便利な機能なのに。Google日本語入力は、パーソナライズの重要性を低く見過ぎていると思う。個人のニーズを捉えず、流行にばかり堪能なのは、10年代の悪い文明だ。
ATOKはこの10年、強力なライバルに打ち勝つべく、ずっと進歩を続けていたのだなぁと思う。しかし、Google日本語入力は変わらなかった。これは結局、日本語入力にかける熱量の差なのだろうか。
そしてATOK My Passportを契約した
そんなこんなで、ATOKをしばらく試用してから、僕はATOK My Passportを本契約した(プレミアムの機能は使わないと思えたのでベーシック)。ここまで書いて、その理由は明確になった。端的に、ATOKのほうがGoogle日本語入力よりも優秀だからだ。推測変換の実装と、学習能力の高さが決め手となっている。
Google日本語入力は、確かに日本語入力システムの歴史を変えた。インターネットの新しい風を吹かせた。それについては本当に評価したい。競争相手がMS-IMEだけで、今のATOKがなかったのは間違いないだろう。そして、Google日本語入力は無料で使えるという大きなアドバンテージを持っているため、今でも多くの人に勧められるものではある。だが、僕は元々日本語入力システムに金を払ってもいいと思う人間だった。僕がGoogle日本語入力を使っていたのは、経済的な問題ではなく、ATOKよりも良いとかつては思ったからだ。そして、今はその逆だ。
なんとなく、時代は変わるんだなと最近実感している。こうしてまたATOKを使うことになったが、いずれまた別の日本語入力システムを使う日がくるかもしれない。日本語入力システムだけではなく、一時はGAFAがすべてを飲み込むようにも思えたが、今はもうそんな気配はない。
またきっと、変わるんだろうね。その時までは、ATOKを使おう。
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