トランプ関税から世界を救ったサムライがいるらしい

上がったり下がったりしているトランプ関税だが、噂によるとトランプに追加関税を一時停止をさせたのは、なんとあの農林中金ではないかと言われている。

邦銀の米国債売りが世界を救ったのかもしれない。相互関税一時停止の背景(久保田博幸) - エキスパート - Yahoo!ニュース

この記事にある邦銀が農林中金ではないか、とまことしやかに言われているわけだ。

(追記)4/14(月)日経新聞で農林中金説について否定する記事が出たので補足します。
農林中央金庫、4月のアメリカ国債大量売却を否定 運用改革中長期に - 日本経済新聞
しかし、この記事の主旨は事実の究明ではないため、記事は残します(本文も特にいじっていません)。

目次

昨日何が起きたのか

まずそもそも何があったのかだが、まず記事を超訳すると以下のような感じだ(by ChatGPT)。

4月9日、東京時間の昼に米国債と日本国債が突如大量に売られ、米10年債の利回りが急騰した。犯人は日本の銀行(邦銀)ではないかという観測が出ている。

この異常な金利上昇を受け、ベッセント米財務長官が関税政策に介入。トランプ大統領に働きかけ、発動したばかりの追加関税の一部を「90日間停止」する方針が発表された。

結果的に、誰かの国債売りがトランプの政策を止めた――そんな可能性が真剣に語られている。

実際、追加関税停止の前夜、一時は4%を割った米金利が一気に上昇しており、「FRBは緊急利下げと量的緩和をしないと翌日株価が暴落します!」のような怪ツイートが流れていた。そんな状態だったところで、どうも時間外の板が薄い時に急な売りがあったらしく、どうやら当事者は邦銀なのでは、と。

実際、以下のようなツイートがバズっていた。

Round of applause to the Japanese hedge fund that was 60x levered 10Y UST’s that blew up last night to save the world from the Great Depression. We will not forget your sacrifice brother

世界恐慌から世界を救うため、昨夜60倍のレバレッジをかけて10年物米国債に突っ込んで吹き飛んだ日本のヘッジファンドに拍手を。

君の犠牲を、俺たちは忘れない。

Truly heroic. While the rest of us were diversifying, he was out there levering 60x on 10Y Treasuries, battling Jerome Powell hand-to-hand on the yield curve. A modern-day samurai, slicing through VaR limits with honor. Legends aren’t born—they’re margin called.

まさに英雄的だ。
私たちが分散投資に励んでいたその時、彼は60倍のレバレッジで10年物米国債に挑み、イールドカーブの上でジェローム・パウエルと一騎打ちしていた。
VaR(リスク制限)を誇り高く切り裂く、現代のサムライ。

伝説は生まれるものではない――マージンコールされて生まれるのだ。

この日本のヘッジファンドというのが邦銀に当たる。60倍レバ10年債を売りまくっていたらしい。これは明らかに意味不明な特攻であるので、こうして面白おかしく語られているわけだ。特にリプライの人の英語は秀逸で、英語に疎い僕でも声に出して読みたいと思わされた。これがシェイクスピア……。

60倍レバ10年債特攻のソースは不明であるものの、相場に影響を与えるほどの売りがあったことは事実のようだ。これについて、元記事では以下のように書かれている。

どうして無理矢理売ってきたのであろうか。もしや強引に利回りを引き上げようとしたのかと穿った見方も出てきてもおかしくない売り方であった。

これをもし政府レベルで公式にやれば明確に政治的なメッセージになってしまうところだが、アメリカからすると民間であるヘッジファンドが自爆しているだけなので文句のつけようないだろう。実際アメリカの国策に逆らうかのようなイールドカーブ上の売り特攻はまさにheroicで、狂気としか言いようがないのではなかろうか。

なので記事も小首をかしげているし、ツイートの外人さんたちも自己犠牲的なナニカと捉えてサムライに拍手を送るしかない、という感じだ。噂によると自己資本比率を適切に保つ国際的な枠組みであるバーゼル規制のために売らざるを得なかったという見方もあるようだが、むしろそんな制約があるのになぜ大量のニトログリセリンを仕込んでいるのかとむしろ謎が深まるし、市民的には狼狽売りとかロスカに見えるが、いずれにせよ尋常ではないし戦略的な行動には見えないという点では一致している。合理的ではない。

このJapanese hedge fundの正体が農林中金ではないかとは噂程度ではあるんだが、実際米国債に影響を与えられるほどで、かつこんなわけのわからんことするところって……。

知性をねじ伏せる力を混沌が飲み込む

ということでまぁ、個人的には農林中金英雄説は信憑性があるなぁといった感じだ。これについては政府の差し金ではとみる向きもあるようだが、アメリカに喧嘩売っているとも取られかねない行動を秘密裏に実行する胆力が現政権にあるとは思えない。

しかしそうするとまさにheroicな特攻ということになってしまうのだが、アメリカもそのように考えたからこそ、意味不明ということでいったんひかざるを得なかったのかもしれない。

トランプは狂人のように語られているが、実際のところはルールベースの男で、ただエリート的な平均と全体最適に迎合しないだけだ。部分突破の強硬策が現代的なエリートからは異常者に見えるだけで、まぁ織田信長が周りからすれば異常という程度の話と思う。彼もまたインテリの一形態で、秩序の中にいる。知性を力でねじ伏せるようなやり方だが、その力はあくまでも秩序のために使われている。つまり、暴力もまた合理なのだ。

もし狂気というものが本当にあるのだとすれば、それは今回のJapanese hedge fundの売りがそうだったのかもしれない。圧倒的非合理、いや非合理ですらない意味不明。そしてその狂気の前に、トランプは引いた。

結局のところ、本当に強いのは知性でも力でもない。混沌だ

狂気の上に立つ合理

まぁ実際のところアメリカがこの事象をどこまで重視したのかは不明であるし、また真偽不明の怪情報が色々と錯綜しているものの、とりあえず追加関税がいったん停止となったことは喜ばしい事実である。10%は引き続きあるものの、少なくとも交渉の余地があるということは明確に示された形だ。色々言われているが、恐らくトランプ自体は関税について割とどうでもよいと思っているのではないかと思われ、うまくいくなら使うし、だめそうなら使わないといった程度ではなかろうか。

それにしても、もしも本当に、我が国の誇る巨大な不合理の塊が、世界のインテルが狼狽するばかりだったトランプの力を抑え込んだのだとしたら、人間の世界とは本当にわからないものだと思う。まぁ事実がどうであれ、僕は引き続きリバランスを進め分散投資に励んでいくことにするし、トランプも白目を剥く60倍フルレバ特攻など狂気の沙汰とか思うものの、僕の合理はその狂気の上に成り立っている。敬礼。

蛇足:ツイートがバズった

蛇足です。この記事を書いている間に、ツイートがバズってて笑いました。しかも似たような2ツイート。農林中金がトレンドになりはじめたタイミングだったので、ちょうどよかったんでしょうね。まぁでもタイミングだけじゃなくて、僕はこの件を本気で面白がっていたから、多分なんか、生の躍動みたいなのもこもったんだろうなと、ツイートを振り返って思います。

なんにせよ、混沌とした世の中ですが、笑いの場を作れたならなにより。人生初の万バズです。農林中金特攻の真偽はわかりませんが、事実としてブログのPVは増えました。

「農林中金が60倍レバ10年外債損切り特攻するどうなる?」
「しらんのか。」
「うちのブログのPVが増える。」

この記事をいいなと思っていただけた方、よければ高評価・チャンネル登録……はないので、コメント・SNSでシェア・ブックマーク、RSSフィード登録を、よろしくお願い致します。

コメント

コメントする

目次