ワイヤレスチャージって何に使うの?という話があった。僕はだいぶ前から無線充電(ワイヤレスチャージ、無接点充電)を使っているので、つらつらと答えていたのだけれど、その答えが自分でも驚くほど長くて、あれ、もしかして僕はけっこう充電に一家言あったのかな、と思った。
充電を有線から無線に切り替えることは、単に線をなくして煩わしさがなくなるということじゃない。ライフスタイルそのものの変革なのだ。充電とは生活の一部である。
皆に知れ渡っているわけではない機能かもしれないが
無線充電は一般的になんと言われているのだろう。無線充電というが充電器は有線じゃないか、という話もあるかもしれないが、その理屈だと無線LANルータは有線LANルータじゃないか、ということになってしまうので、無線充電という言葉自体は悪くないように思う。が、使われているかというと、どうかな。
規格名のQi、無接点充電、無線給電、あるいは横文字でワイヤレスチャージか。ワイヤレスチャージについては、ワイチャという略語もあることを聞いたが、それだと有線充電もワイチャ(ワイヤードチャージ)じゃないか、と気になってしない、個人的にはあまり使いたくない。まぁそもそも横文字をあまり氾濫させたくないという気持ちもある(僕はリモートワークも在宅勤務と呼んでいる)。
まぁ呼び名で悩んでしまう程度には、まだまだ皆に知れ渡っているとは言い難い機能だと思う。しかし、一昔前に比べれば随分と使われるようになったと思うし、また実際僕も使っている。
暗闇の中で使いやすい
僕の場合、ベッドに無線充電機を置いている。なぜかというと、寝る前にベッドでスマートフォンやタブレットをいじることが多いからだ。「どうも眠れないな……スマホでもいじるか。"夜 眠れない"で検索……なになに、寝る前にスマホをいじるのはやめましょう、なるほどね」といった具合だ。
で、ウチには照明用のリモコンもないので、消灯していじっていることも多い。まぁ、あったとしても消灯しているだろうが。で、スマホいじりをやめて就寝に入る時、できれば充電状態にしたいものだが、なにしろ真っ暗闇なので、裏表のないLightningケーブルやUSB Type-Cであっても、一苦労である。
が、無線充電ならば、スマートフォンを充電台に置くだけであるので、暗闇の中でのケーブルの挿抜に比べるとだいぶ楽だ。ということで、ベッドの枕元に、僕は無線充電器を置いているのである。
ワイヤレスイヤホンと相性が良い
置くだけで充電できる、とは中々便利で、AirPodsもWireless Chargeできるモデルにすればよかったと大いに後悔した。
イヤホンはあまり大きな電力を必要とするわけではないので、充電容量はあまり大きくない。また、ちょっと使ってちょっと充電する、というシチュエーションもよくある。さらにモノ自体が小さくて、ケーブルの挿抜がちょっと不便、ということもあって、ワイヤレスイヤホンと無線充電は非常に相性が良い。無線充電器を定位置にすることでなくしづらくなる、というメリットもある。
スマートウォッチとの相性は……
後はスマートウォッチで使うことが考えられるが、僕はこれについてはちょっと否定的だったりする。というのも、無線充電とはいえ、充電器に置く必要があるので、スマートウォッチをどうしても外さねばならないからだ。スマートウォッチについては充電自体が基本ギルティである。
なので、僕はボタン電池で8ヶ月稼働するWithingsのActiviteというちょいとニッチなアナログ時計盤のスマートウォッチを使っている。WithingsはアプリケーションのUIはそれなりにきれいなのだが(ヘルスケア分野はアプリケーションが終わっているメーカーばかりだ!)、ハードウェアがダメダメで、ActiviteもMade in Swissでそこそこ根が張った割に(スマートウォッチにしては、だけど)、使いはじめて数年で分針がずれ始めたし(デザインはいいんだけど…)、体重計も高いわりに機能が微妙に過ぎる。血圧計に至ってはいつまでたっても日本で売ってくれない。
ということで、次のスマートウォッチはWithingsを使わないつもりだが(残念)、やはり外して充電する必要がない、あるいはほとんどないものを選ぶと思う。超省電力の電池駆動、省電力+ソーラー充電だろうな。自由空間を経由した無線給電が実現しない限り、Apple Watchを始めとしたガチのスマートなやつは使わないだろう。
無線充電という浪漫
顧客が欲しいのはドリルではなく穴だ、とはマーケティングにおける有名な格言だが、一方で「穴ではなくただ無駄にカッコいいドリルが欲しい顧客も一定数いる」というのもやはりこの一筋縄ではいかない世界の現実であり、僕なんかは多分にそういう傾向が強いことはあるので、割と無理やり用途を作った感はないでもない。
個人的にはそもそもケーブル自体がギルティであり、可能な限り廃したいと思っているが、まぁ別にあったところで大した実害もない。給電用途以外は可能な限り無線にしているが、そもそも機材の数が多すぎるので結局ごちゃごちゃしているし。ゴチャゴチャ度が10も20も、あまり変わらんだろう。引っ越しの時は多少楽だが、そう何度もあることではないし。
とはいえ、本当に使い所のないものなら、なんだかんだで使わなくなるはずだ。かつて、そういうことがあった。
ライフスタイルに根ざした充電のあり方
置くだけ充電という言葉が喧伝されたのは何年前のことだろう。無線充電自体は、だいぶ前に流行りかけた、あるいはメーカーが流行らせようと仕掛けていた時期があった。Googleの Nexus 7 2013モデルにQiが搭載されたあたりの頃だ。
あの頃は微妙に無線充電対応モデルが出ていて、Qi対応のモバイルバッテリーやデジカメなんかがあった。いや、今もあるんだが。
でも微妙だったな。モバイルバッテリーにせよデジカメにせよタブレットにせよ、正直無線充電との相性がいいとはちょっと言い難いように思う。無線充電は頻繁に充電するもの(ワイヤレスイヤホンなど)や、ケーブルの挿抜が難しい(環境が暗闇、モノ自体が小さいなど)もの、防水仕様、定位置が決まっているもの(電動歯ブラシなど)なんかで威力を発揮するように思うが、モバイルバッテリーもデジカメもタブレットも、それらの条件に当てはまるかというと、うーん。
なんか機能を搭載しやすいところに搭載していみました、という感がありありとしていたな。実際、Googleはしばらくして結局Nexusシリーズから無線充電を取っ払ってしまうし。
そこへやってきたのが、僕らのApple。iPhoneは8から無線充電に対応している。Apple Watchは無線充電前提だし、AirPodsも相性がいい。Apple製品を使っていると、自然と無線充電を使いたくなってくる。一方、iPadはまだ無線充電に対応していない。これは、便利に使うシーンが現状提案できないからだろう。真っ先にタブレットに搭載したGoogleとは偉い違いである。
ここらへん、ハード屋でUX指向のAppleの良い点がでたと思う。最近はApple機器の間で相互に給電できるような機能の噂もあるが、非常に期待できる。Appleはライフスタイルに根ざして、無線充電のあり方を提案していると思え、非常に好感触だ。
充電とは地味なものではあるけれど、なくてはならないもので、単なる機能を超えた生活様式の一部であると思う。有線系と違い、技術的にも難しいせいか、無線充電のアクセサリーはまだまだ微妙で質も良いとは言い難いものが溢れている。各社メーカーの今後に期待したい。
コメント