welq騒動雑感…今のインターネットの限界だと思う

DeNA守安社長「辞めるつもりない」─WELQ騒動で謝罪会見、著作権法や薬機法の責任は? - Engadget 日本版

welq騒動をきっかけに、大手の運用するキュレーションメディアの多くが記事を閉じているようです。カタカナ語を使ってそれらしくしていますが、低品質のパクリサイトなのでwelqみたいに問題になる前に逃げようということでしょう。この問題は今に始まったことではなく、ずーっと燻っていたネットの闇でした。今回それが、「医療」という生命に関わるラインを超えたことで、爆発したのですね。

端的に言って、これは現在のインターネットの限界を露呈した、と思います。welqが消えても、問題の根本は解決しないでしょう。

目次

信憑性の問題と著作権侵害の問題

welqの問題は、論点が大別して2種類あります。1つは信憑性。そしてもう1つは著作権侵害です。根底にある問題は同じと思いますが、少なくとも表面上この2点です。welqは今回、主に前者の信憑性から、「薬機法」という法律に触れ、越えてはいけないラインを越えてしまい、大きな問題となりました。

まぁでも、こうなるのは時間の問題だったのだと思います。これは畢竟、広告収入で利益を出そうと焦った結果ですから。

広告収入で利益を出すことの難しさ

サイトの広告収入で利益を出すことは、非常に難しいことです。

広告収益は、だいたいPVに比例します。このサイトは、だいたい月間3万PVで、月の収益は数千円といったところです。維持費として、月額1,000円以上かかります。そこから考えると、本格的に商売としてやるのであれば、広告の配置などに商売っけを出して客単価を上げたとしても、サイト運営に関わる人間一人につき、少なくとも100万PV/月くらいはないと、ちょっとやっていけないんじゃないか。それだけのアクセスを集めるサイトとなれば、維持費も鰻登りですし。

まぁここまで大きくなると、大手スポンサーとの個別契約なんてのもあるのかと思いますけれど、それにしてもPV単価という目で見ると、劇的に変わるということもないのではないかな。

簡単に言いましたけれど、月間100万PVって、それはたいへんなことです。まずそれだけの人が関心を持つトピックからして限られます。メイントピックがRaspberry Piではダメです 笑。

一般的なトレンドを掴まないといけません。トレンドは日々めまぐるしく移り変わります。つまり、当たり前ですが、常に大衆の心を掴むような記事を更新し続ける必要があります。それも、相当の記事数が必要です。

まぁ、真っ当なやり方では無理でしょう。当サイトのような好き勝手な雑記ブログでさえ、適当に書く記事でも1時間くらい、ある程度考えをまとめて書いたものが1時間半から2時間、場合によっては3時間(この記事もそれくらいかかっている)、それなりにちゃんと調べて書いている記事は、うーんもう自分でもわからないくらい。技術的なものだと、1記事書くのに日単位でかかることも珍しくありません。

オリジナルコンテンツをマジメに作ろうとすれば、膨大なコストがかかります。とてもじゃありませんが、利益は出ない。ならばいっそ、他の人の記事を持ってきたらよいのではないか。そうしてできたのが、いわゆるまとめサイトであり、キュレーションメディアとかいうやつです。

NAVERなどは一応元の分をそのまま使う引用の体を取っていますが(個人的には引用の範疇を超えていると思いますが)、このwelqはなんと元の文を微妙に変えることで、さもオリジナルコンテンツのように見せかけてGoogleを騙していたというのだから、悪質と言わざるを得ませんね(これは、Googleの検索品質の問題でもあります……AIがどうのと喧しい昨今ですけれど、この分野で最先端を走るだろうGoogle先生の検索エンジンでさえ、まだこの程度のパクリを見抜けないのが現実という認識は持っておくべきでしょう)。

ここに、他人の成果を、さも自分の手柄であるかのように並べ立てることで、コストを削減し、利益を最大限まで上げるという手法が完成しました。引用の範疇を大きく超えていても、著作権侵害は親告罪で、時間的・経済的な問題から、実際に法的措置を取れる人は多くありませんので、知ったこっちゃありません。そこにあるのは利益至上主義で、元記事の制作者に対する敬意など皆無ですし、そんな態度ですから、もちろん記事が本当に読者のためになるかどうかも問題ではありません。金になるかどうか、ただそれだけが問題です

ネットで金を集めるということ

今回、welqは医療という生命に関わる記事の品質の低さから、大きな問題となりました。しかし、本質的な問題は記事の品質が低いことではありません。記事の品質が低いことは結果です。だいたい、他人の記事を窃用して記事を構成しているのですから、同じような品質の記事がネット上には跋扈しているということでもあります。welqが死んでも、元となった品質の低い記事が検索上位に来るのであれば、全体としては無意味でしょう。

問題は、金だけを追い求めたことです。だから品質の低い記事を作るし、元のコンテンツ作成者への敬意もないから、著作権も平気で侵害する。記事の信憑性のなさと、著作権侵害の問題はセットです。利益至上主義という同じ問題が両者に通底しています。

逆に言うと、今ネットで金を追い求めるとこうなる、ということを端的に示した事例とも言えます。もっと言えば、welqで問題となったような元記事も、恐らく多くは金を目的にしたものだったのではないですかね……ただ、welqほど金儲けの仕方がうまくはなかった、というだけで。もっとも、そのおかげで大きな問題にならず済んでいるのだから皮肉です。

今のネットで真っ当に金を生むのは難しい

金だけを求めたことが問題だと書きましたが、これはちょっと語弊があって、金を求めること自体は決して悪いことではありません。ただ、今のネットの仕組みは、真っ当なコンテンツを作っている人が、金銭的に報われるような仕組みではないのが現実だと思います。ポピュリズムは現実社会にも蔓延っていますけれど、ネットにおいては特に顕著です。

それは、適正な評価というのが、いかに難しいかという話です。現実社会においては、素人の意見と専門家の意見が、社会的なフィルターを通すことでそれなりに重み付けされます。しかし、良くも悪くもネットはすべてがフラットです。その中でGoogleの検索アルゴリズムはよく頑張っているとは思いますけれど、その限界がこのような形で露呈されたのだと思います。

そうである以上、welqをはじめ各種大手キュレーションメディアが撤退したところで、問題の根本は解決したことにはなりません。

この問題は、非常に根深いです。最近、個人的に購読しているブログの一つが、NAVER絡みでブログを一時休止してしまいました。NAVERにコンテンツを無断転載され、そのことでNAVERとやり取りしたものの、問題は解決せず疲弊されたとのことです。なんだかなぁ……という想いが強まり、記事を書きました。

地道ですけれど、元記事にできるだけアクセスするようにし、金儲け目当てに作られたよくわからんサイトにはアクセスしない、という一人の一人の努力が、現状は求められるんじゃないでしょうか……なんとも厳しい話だなぁ。どうにかならんもんだろうか……。

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