技術評論社のしくみ図解シリーズ、『光学機器が一番わかる』。著・福田京平。2010年初版発行。
内容としては、レンズやパッシブな光学素子周辺の話を中心とした入門書。説明の仕方はわかりやすいと思う。マクスウェル方程式の説明がうまい本はわかりやすい本だと思うんだよ。
レンズが主なので、カメラや望遠鏡など好きな人が、光学の基礎を知るのに良いのではないか。レーザーや光ファイバーの話もあるけれど、そのへんは内容が少なすぎるので別書を読んだほうが良い。また、望遠鏡などの応用例も雑多に書かれているものの、あくまで参考程度といったところ。
わかりやすいけれど、タイトルに合っているかな?
光学系の入門書を数冊読んでいるが、本書はわかりやすい類だと思う。特に光の捉え方は大別して3種類(光線、波、粒子)、とハッキリさせたうえで、それに基いて議論するのは、自分がどこにいるのかもよくわからない入門者には有難かった。
本書は主に光を「光線」として捉えた幾何光学の話が中心。具体的にはレンズと光学素子(光学薄膜やビームスプリッタなど)。レーザーの話なんかもあるけれど、それは参考程度。そこは他で学んだほうがよい。
基本に忠実だと思うが、光学「機器」と言われるとどうだろう。確かに機器の話もしているが、そちらはどちらかというとオマケ、参考、応用の例示程度のような。
全体の流れ
全体的な流れは、以下のような感じ。
- 光とは何か
- レンズを中心に、光を光線として捉えた話
- 光の通り道や偏光に影響をおよぼす光学素子の話
- 唐突に始まるレーザーの話
- 身近な光学機器の解説
本のタイトルからいくと、本書を求める人は5の内容を求めているのではないかと思うが、一つ一つの機器に割かれているページ数が少ない。表紙には「3Dなどの先端技術も解説!」ともあるが、ホログラフィーの話などは申し訳程度に書かれているのみ。実際には、2,3の内容が本書のハイライトだと思う。
内容
目次を参考に内容についてつらつらと。
- 第1章…光の基礎
- 光学の歴史、光の捉え方
- この光の捉え方はわかりやすかった
- 「光線」「波」「粒子」として捉える。それぞれ「幾何光学」、「波動光学」、「光の量子論」に対応する
- 本書は主に「光線」として捉えた話をしている
- 「光線」「波」「粒子」として捉える。それぞれ「幾何光学」、「波動光学」、「光の量子論」に対応する
- マクスウェル方程式の定性的説明もわかりやすい
- マクスウェル方程式をどう説明するかは、その本のわかりやすさを測る一つのバロメータではなかろうか
- この光の捉え方はわかりやすかった
- 光学の歴史、光の捉え方
- 第2章…色と発光のしくみ
- 3原色、人が色を認識する仕組み、色彩光学、発光の原理
- 人の目の話まで掘り下げるのは珍しい
- 3原色、人が色を認識する仕組み、色彩光学、発光の原理
- 第3章…幾何光学
- 恐らくこの本のハイライトの一つ
- 光を「光線」として捉えた時の話
- レンズ論入門、収差の仕組み
- 凹面鏡、凸面鏡
- 作図の仕方はもちろんする。中学理科の復習
- レンズは自動設計が基本という話がためになった
- 第4章…さまざまな光学素子
- 素材や製法まで掘り下げたレンズ論入門。やや難しい
- 光学薄膜のしくみ
- 偏光ビームスプリッタ、プリズムなど偏光素子のしくみ
- フォトダイオード、LDについて
- 白熱電球、蛍光灯など照明用光源について
- 第5章…時代を支える光学技術
- レーザー、光ファイバーの話、ただし内容は通り一遍で薄く、このあたりの話は別書を参考にしたほうがよい
- 本書では若干浮いている。無くてもよかった気がする。
- 第6章…さまざまな光学機器
- デジカメ、光学顕微鏡、望遠鏡、液晶ディスプレイ、プロジェクター等、雑多に仕組みを解説。雑学的。
- 本書の総まとめといったところ。わかるやつもあればわからないやつもあり
なんだか雑多な印象を受けるのは第5章のせいだろうか。
レンズを中心とした光学系の入門書が読みたい、という向きによいと思う。
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