高騰する医療費と減少する就労人口、先はないのだろうか。みんな幸せに生きて死にたいだけなのにね

2017年度の医療費は42兆円だったらしい(昨年度の医療費、過去最高42.2兆円 2年ぶりの増加:朝日新聞デジタル)。さらに、2040年度には66.7兆円までいくという内閣府の試算がある(2040年度の医療費、66兆7000億円、政府推計|医療維新 – m3.comの医療コラム)。もちろんこの医療費は国民皆保険制度の下、国民から徴収されている。まぁ実質的に税金。

一方で、少子化の影響から労働人口は現象を続け、2040年度には2018年度の6500万人から5600万人に減少する見込みだ。つまり保険料や税金を収める人たちが減るわけで、このままいけば破綻するんでは?と思ってしまうのも当然だと思う。さらに5600万人のうち、5人に一人が医療関係の仕事につくという。つまり、就労先の最大手だ。これはなかなか絶望的じゃなかろうか。

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2030年、医療は就労先の最大手になる

就労人口の比率は2018年度においては12.5%で、「産業別就業者数|早わかり グラフでみる労働の今|労働政策研究・研修機構(JILPT)」によるとこれは小売業(16.1%)製造業(15.9%)に次ぐ第三位。それが、2040年には18.9%でトップになるそうな。

もっとも、トップに躍り出るのはもっと早く、2030年には医療・福祉分野が一位になると推計されていて、これは2030年問題と呼ばれている。

ここで問題となるのは、医療費の原資、すなわち財源。「医療費の仕組み」:みんなの医療ガイド – 全日本病院協会によれば、医療費の財源は

  1. 保険料
  2. 国庫負担金と地方の公費
  3. 患者の自己負担

に大別される。国民皆保険制度で、自己負担額は3割にきまっている。よって、財源のメインは保険料と税金ということになる。医療に関わる全体の就労人口が増えても、全体の就労人口は減っているわけだから、当然保険料と税金は減るだろう。

つまり、減った椅子を増えた人数で取り合うことになるのだから、これはどう考えてもつらい。今でさえ、介護などはその待遇の悪さが有名で、待遇改善を叫ばれているが、この推計を見る限りどうも先行きは暗そうだ。

どうしたらいいか。単純に考えて、収入を増やすか支出を減らす、あるいはその両方となる。しかし、収入を増やすといっても、財源が保険料と税金である以上、その手段は増税だ。困る。すごく困る。一方、支出を減らすといっても、医療は命に関わることだから、おいそれと減らせるものではないだろう。うーん。

そもそも医療費は高いのか

そもそも、日本の医療費は高いのか。「医療関連データの国際比較」なる日本医師会総合政策研究機構のホワイトペーパーによれば、対GDP費で考えた時、10.9%でOECD加盟35カ国で6位だったそうだ(冒頭の資料は見通しとはいえ数値がえらい違う気がする。この数値の差もけっこう気になる。予防周りか?)。これを多いと見るかどうかは人それぞれだろうが、まぁ少ないと考える人はいないだろう。

ちなみに上記資料によると、アメリカが17.2%でぶっちぎりの一位。さすが。アメリカは医者にかかると高額ってよく聞くけれど、それは本当らしい。一方、日本は診療報酬を国が定めているので、制度に是非はあるとしてもあまりめちゃくちゃなことにはならんのでしょうな。

ということで、別にめちゃくちゃ高いわけじゃなさそうなんだが、それでもやっぱり医療費は問題だとは思う。それを支えるのは国民全体だからだ。アメリカはべらぼうに高いけれど、オバマケアで無保険者をだいぶ減らしたみたいだが、トランプさんは廃止したがっているし、まぁやっぱり基本は払える人が払う形なんでしょう。これはこれで問題に思えるのだが、日本の抱える問題とはちょっと質が違う。

近いのはGDP比的にも国民皆保険な制度的にもフランスあたりだと思うんだが、フランスは問題ないんだろうか?と思って調べてみたら、あちらはあちらでたいへんそうだ。

共通していえるのは、めっちゃ待たされるらしい、ということだ。でもそれ、けっこう正しいんじゃないかな、とは思う。さすがに重症・重病なら話は違うのだろうし。「理想の医療保険制度はどの国にある? | ビジネス | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト」によれば、カナダもだいぶ待たされるようなのだが、以下の文言にその価値観が端的に表されている。

カナダ人は緊急性の低い医療は長く待たされてもいいと思っている。ただし、金持ちも貧しい人も同じ時間だけ待つのが条件だ

なるほど。医療は全国民が受ける権利を持つ公的なものだ、という価値観が強く出ていると思う。

ただ、そうするとやっぱり保険料と税金で……となり、その中でできることを……となれば、どうしても順番待ちのような問題は起きてしまうんじゃなかろうか。

頑張りすぎかもしれない

逆に言うと、日本は予算に比して頑張りすぎている、といえるのかもしれない。しかもその頑張り方は非常に非効率的と思われる。というのも、僕は今医療系のITサービスをしていて、仕事柄病院の実情をよく聞くのだけれど(こんな記事を書いているのもそのために医療について関心があるからだ)、いまだにFAXが使われているそうで、それはつまりIT化が進んでいないということだ。少なくともこの21世紀、IT化は効率化の必要条件だろう。それがなされていないということは、業務効率の改善には大きく見直す余地があると思われる。

まぁでも、実際、医療従事者でITに強い人間は少なそうだ。それは仕事で知り合った看護師さんたちを見て思うし、理学療法士をしている姉も、病院関係者のITリテラシーのなさをよく嘆いている。というか医療関係者の誰に話を聞いても、医療の現場の実態としてITリテラシーについてはまぁそうだろうね、という感じなので、そうなんだろね。

うーん。現場がこれではなぁ。僕は今IT系で飯を食っているから、できればITをうまく使って業務を効率化して、質を上げてほしいとは思うけれども、ITなんていっても別に魔法ではないから、結局のところ効率化がうまくいくかは、現場のITリテラシーに依存すると思っている。それが期待できないとすると、色々と厳しい。

まーでもきっと、諸外国も同じような感じなんじゃないかな。FAXは使ってなかったとしても、日本に比べてめっちゃ効率的ってこともなさそう。だから、めっちゃ待たせることになっているのかなぁ、と。まぁ、めっちゃ待たせるのも、それはそれで一つの形かもしれない。

予防できればいいけどね

そもそも病院にお世話になる機会を減らす、という考え方もあるだろう。そのため、予防医学は一つの道だと思うんだが、現状日本ではあまり制度として進んでいないようだ。ホリエモンが推奨していて有名なピロリ菌の駆除にしても、検査は症状が出ていないと保険適用外だったり、僕が信用している歯科医さんも、日本の医療保険では予防にならない、虫歯になる前の対策こそが本当に大事なのに、とひどく嘆いていたり。

診療報酬制度そのものの問題なのか、それとも診療報酬を定めるプロセスに問題があるのか、今の僕にはなんともわからないが、いずれにしても、今の日本は予防に力を入れているとは言い難い状況のようだ。

医療の産業化

もう一つ、国民皆保険制度を廃止し、株式会社が病院を運営して、産業化する、という考え方もあるようだ。支出を減らすのではなく、収入を保険・税金以外で増やす、ということやね。これはかなり突飛な考え方に思えるけれど、そのように主張する本を最近読んで、そういう道もあるのかな、と思った。

あなたの仕事は「誰を」幸せにするか? というタイトルからはわからないが、医療改革を主題にした著書である。著者(北原茂実)は自らの医療改革案を立証するために、カンボジアで病院作り理想の医療を実現しようとしている行動派。その行動力には感服せざるを得ない。国民皆保険制度を廃止して、新たなセーフティネットを用意し、医療を産業化してビジネスにしよう!という大胆な提言。自身の病院でもワンコインドックなんて面白い試みをしている(当院の強み – 北原ライフサポートクリニック)。

本記事を書き始めたきっかけも、本書を読んだからだ。本記事の前半部は本書を読んで知った問題点である。著者の言う現状の問題とこのままでは医療関係者はワーキングプアになるという主張はそのとおりだなぁとうなずいたし(介護とか既にそうかもしれない)、その解決策としての医療の産業化は、夢のある話だと思った(日本の資産の6割以上を保持する60代以上は、医療くらいでしか金を使わないだろう、という現実的な打算もあるが…)。

本書では、国が保険適用できる範囲と、その定価をつける診療報酬制度も問題だとしている。これは、予防しようとするとだいたい保険適用外になってしまう問題が現状あるだけに、わかりやすい。もっとも、この制度があるから、アメリカのような高額な病院費用という問題になっていないようにも思うのだが。実際、アメリカでは医療費を払えず自己破産している人もいるというニュースも見るし、著者の言う新たなセーフティネットとのバランスは非常に難しそうな気がする。

診療報酬制度自体の問題というより、その内容を決めるプロセスに問題がある、ということも考えられそうなのだが。どうなんだろう。ただまぁ、診療報酬制度は言われてみるとたしかに色々おかしく思うところはあって、たとえば古い設備でも最新の設備でも点数は同じそうなのだが、これが質的に同じ医療のはずがない。しかし点数的には同じだから、最新の設備を揃えて良い医療を提供しようと頑張れば頑張るほど、経営は苦しくなるという指摘は、なるほどなぁと思った。

かといって、患者側が病院を選べるほど、病院の情報が開示されているわけではないしね。これは、全国どこの病院でも通えるフリーアクセス制日本の医療の特徴①公的保険とフリーアクセス – 田舎女医の小言)と、どこでも一律の価格で同じ医療が受けられる、という建前があるから、らしい。設備が違うとか手術成功率の実態とかがわかったら、その建前が崩れるということなんだろうか。なんだかなぁ。

問診はAIでやる(エキスパートシステムみたいなのを想像したらいいのかな)とか、GEヘルスケアのインドでの成功例(インド向けに作ったMAC400という携帯型心電計が、便利だとしてEUでも受け入れられた、というリバース・イノベーションの事例)の話とか、そういうことは民間の発想と仕事ならではだよなぁ。

そういう風に言われてみると、公的医療と国民皆保険制度が絶対でもないのかなぁ、とは確かに思った。ただ劇的なだけに、もう少し考えを整理したいのだが……。医療が一大産業というのも、ちょっと抵抗があるし(医療が公的なものだからと言うわけではなく、単に医療自体は何かを生み出すものではないから、その医療が一大産業というのもなんだか……まぁ著者はだからこそ輸出産業にする、と言っているのだろうけれど……)。間接的に医療に関わっている身であるし、偏見にとらわれず、ちゃんと考えないとな、と思っている。

幸せであること

色々考えさせられたが、本書で一番面白かったのは、日本人の死因一位はがんではない、という主張だった。がんは免疫機能が低下した結果かかることが多い、免疫機能が低下する原因はストレス、したがってストレスフルな生活こそが原因だ、したがって人を幸せにすることは医療だ、誰かを幸せにする人は皆医療者だ、という主張である。

まぁ……そうだよね。なんかね。根本的には、そういうことなのかな、と思う。別に働くって、本来嫌なことじゃないはずだしね。幸せな生活って、究極の予防だよな。そうだよな。うーん。そりゃそうかもしれないけどさ。なんだろうね。みんな、そう望んでいるはずなのに。なんでうまくいかないかなぁ。

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