Googleの男女問題の文書公開で社員が解雇された事件についての雑感

Googleの元社員が、男性と女性は生物学的に(biologically)違うとして、Googleのダイバーシティ推進の方針を批判する社内文書を公開した。この問題は波紋を広げ、ついにはCEOまで出てくる事態に。男性社員は解雇されたとのこと。

男女論は全員が参加できる議論であるせいか、議論以前の非常に厄介な展開になることが多く、あまり関与したくない分野だが、閲覧者が男女比率9:1の当サイトを管理する者として思うところもあるので、雑感を書き留める。

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一部国内記事のミスリード

まずこの問題について、国内で取り沙汰されている記事は煽り気味に思える部分があることを知っておかねばなるまい。男女論は、伝言ゲームの末に曲解・誇張が頻繁に起きる分野なので、ニュースはまず疑ってかかるべき、というのが経験則であるが、やはり本件もその例に漏れない。

たとえば「「女性は生まれつきエンジニアに向かない」と元Google社員は主張していたのか?:Geekなぺーじ」の記事ではITMediaが表題にした「女性は生まれつきエンジニアに向かない」に該当すると思われる文が、原文では「男性のほうがコーディングを好む」であることを書いている。これは論理的に等価とは言えない。

日本語の記事では明らかに内容を誇張していると思われる記事が多数見受けられる以上、原文をあたらないとどうしようもない。元の文書の全文は米Gizmodoが公開している。

Exclusive: Here’s The Full 10-Page Anti-Diversity Screed Circulating Internally at Google [Updated]

非常に長い文書で、英語が不得手な自分は苦労する……。そんな時にGoogle翻訳。最近本当に精度がよくなった(本文書のような専門性のある内容はまだ厳しいが…)。Google有難う。

Googleの措置は妥当か

国内記事の一部にはミスリードが含まれていることを念頭に置いたうえで、内容の是非ではなく、まずGoogleの措置について考えたい。というのも、その言論の正当性に関わらず、自由主義国家においてあらゆる言論の自由自体は守られて然るべきなので、内容が正しいか間違っているかを判断することと、制裁を課すことは別の問題だからだ。

Googleは男性を解雇した。「グーグル、「男女は生来能力が違う」と書いた従業員を解雇 – BBCニュース」によると、その理由は文書を公開したことが”危険なステレオタイプを推進しようとした”ということで、社の行動規範に接触するから、らしい。一方で、文書の内容の多くは議論に値するものとしても言っており、文書の内容そのものを否定してはいない。ただ、一部の表現には問題もあり、不愉快で不適切としている。それによって傷ついた社員もいる以上、看過することも出来ないので、制裁に踏み切ったのだろう。内容の正否ではなく、行動規範と文書の影響から判断している

男性に必ずしも職場の同僚を貶めるような意図があったわけではないと思うが、同社で働く女性からしてみれば、自身を否定されたと感じたとしてもおかしくはない。

私は男なので、男女を逆にして考えてみる。保育業などは女性比率の高い職場であるが、そこで男性は生物学的に保育に向かないと(明言されないにせよ)示唆されるような文書が回ってきたならば、そこで逆風を感じながらも懸命に働く男性が強い憤りを覚えたとしてもなんら不思議ではないだろう。あなたのことをどうこう言っているのではなく、あくまで統計的、人口分布的な話なんだと言われても、そう受け止められまいな。

Googleの元社員がこのような行動に出た経緯はあったと思うが、それでも他社員の気持ちを考えれば、もう少しやりようがあったように思える。やり方を間違えず、表現に気をつければ、解雇にまではならなかったのではなかろうか。何を言うかではなく、どう言うかこそが大切なのだとようやくわかったアラサーの私である。

とはいえ、解雇までしなくてはいけなかったのかとは思うのが実感だが……。日本の民間企業ならば、内乱罪に関わるようなことでもない限り、たとえ差別的とも取れる内容を含んでいたとしても、社の方針に反するような思想・信条の意見を表明したことでクビになることは考えづらい。もちろん公職ならば話は代わるが。

まぁ、日本は雇用規制が厳しく、雇用の流動性が低いこともあって、解雇がアメリカよりも大事であるために、大仰に感じられるのかもしれない。アメリカならば、Googleで働く一流のソフトウェア・エンジニアが職にあぶれることはないだろう。高給取りとして今後もやっていけるはずだ。

なので、Googleが解雇が妥当と判断したのであれば、それはそれで仕方がないと思う。ただ、そうしていくと、社会で思想による分断、溝はどんどん深まっていくのではないだろうか。多様性があるのはGoogle社内だけで、アメリカという国家はどんどん排他的になっていくのではないだろうか。そうして誕生したのが、現トランプ政権なのではないだろうか。

人間関係もあるから、部署異動に留め、議論の場を用意して徹底的に議論する、等はできなかったのかと思うものの、この手の問題が議論で解決できるのかと言われると、まぁ微妙な気もする(国内の議論?をざっと見ていると、非常に憂鬱な気分になる)。

男女の性差と組織の人口分布について

最後に、男女の性差について愚見。文書の内容を正確に把握できているわけではないので(GoogleのピチャイCEOが言うようにいわゆる”ステレオタイプ”な男女観を提示していることは間違いないようだが…)、内容についてではなく、あくまで一般論として。

まず、一人一人を見ていけば、それはもう個人差であって、その人の属性など些末な問題であることは大前提

そのようなミクロな問題ではなく、もっとマクロな、人口分布の問題として、技術職に女性が少ないことについて考えると、生物学的要因がないとも思えない。

何故ならば、当サイト閲覧者の男女比率が9:1だからである(笑)

自分で言うのもなんだが、当サイトは世間様になんら恥じることのない、極めて健全なサイトだ。就業時間に覗いたとしても、誰にも咎められないだろう記事も多い。実際、当サイトは平日の9時〜5時にもっともアクセスが多く、夕方、休日になるとアクセスが落ちる。皆1記事だけ見て去っていく(笑)。仕事や学習で調べ物の際に辿り着く人が相当数いるのではないかと推察する。お疲れ様です。

そんなお手本のような健全サイトなのに、男女比9:1。ヘタしたらアダルトサイトのほうがまだ女性多いんちゃうやろか……。女性お断りの看板を掲げているわけでもないのに。

大学(工学系学部)の男女比率もそんなものだったし、仕事で会う男女比率もだいたいそれくらい(あるいはもっと悪い)。女の子ってひょっとして液晶ディスプレイの中にしか存在しない都市伝説じゃないのか説が理系男子の間で浮上。

いるとこにはたくさんいるのにね。従兄弟の通った看護学校は、男女比率が1:9だったらしい。

この人口分布の不均衡は、完全に生物学的要因に起因するものとは思わないが、社会的な要因だけで説明することも難しい比率ではなかろうか。中々ガジェットの話を面白がる女性はいないよねぇ……次姉はそういう話大好きなんだけれど。まぁ私だって、母の好むフラワーアレンジメントとかどうでもいいしねぇ……。

実感として、男女に統計的な性差はあるのだろうし、それによって一つの能力の違いが統計的に生じることもあるかもしれない。そしてそれは社会的要因だけではなく、生物学的要因もあるかもしれない。恐らくどんなにしてもなくならないだろうし、なくすべきとも思わない。

そんなことは問題ではない。多様性を受け入れるとは、皆が同じだと考えるのではなく、違うことを受け入れることだからだ。性差があるからこそ、あらゆる組織は不均衡を是正するよう努力すべきだ

それは組織にとってよいことだと思う。というのも、組織内の属性の偏りは、組織を歪ませる一因となっているからと考えるからだ。組織内の人間が均一化していくことにより、まるで組織が世界のように感じられ、自分たちの常識が世界の常識になっていく。おかしいと思っても、おかしいと言えなくなっていく。それはいわゆるブラック企業の土壌である(近年ポリティカル・コレクトネスが同じような土壌を作っているらしいのは実に皮肉)。

色々なバックグラウンドをもった人間が同じ組織にいることは、組織内に世間的にはおかしい妙な常識を固定化させない一助となるはずだ。性別だけではなく、年齢、出身地なども、出来る限り多様であることが望ましい。

これこれの仕事にはこれこれの能力が必要だから…とすると、属性の不均衡が起きやすいが、仕事で求められる能力は多彩で、何が求められるのか、本当のところは誰にもわからない。コーディングの能力はソフトウェアエンジニアの力量を測る重要な指標だろうが、一指標に過ぎないとも言える。仕事もマネジメントも必要だし、ドキュメントの作成や他者との交渉もある。ざっくりとこの職業には誰々が向くなどとは言い切れまい。必要な能力をハッキリと定量化できるのは、大学入試のペーパーテストくらいのもんだ(理系の女子いなさすぎ問題は、入試問題の中身を変えるしかないのではなかろうか…)。

だから、一つの指標に拘らず、多少ミスマッチかな?と思っても、バックグラウンドが違う人たちを積極的に揃えるようにすることは、組織の健全化に寄与するだけではなく、最終的には仕事の成果物にも良い結果をもたらすと私は思う。

飛躍したけど、そんな感じの今日この頃。ところで書きながら思ったが、ここ一、二年まったく女性に出会っていない。どこに行っても男男で私も男。みんなどこで何をしているんでしょうか……。

まとめ

  • 国内記事は煽り気味
  • Googleの措置を取ったことは理解できるが、もう少し穏当で継続的議論に発展させるような形にはできなかったのだろうか
  • 属性による違いはあるかもしれないが、だからこそ人口の不均衡を是正することは良いことだと考える

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