世の中の3つのやり方:正しいやり方・間違ったやり方・俺のやり方

[最終更新] 2016年11月16日

この記事の半分は書評で、半分はメモです。個人的によく読み返している本「UNIXという考え方」の、「7.9 (9) 劣るほうが優れている」という逆説的な小題に書かれていることが、UNIXに限らずあらゆることにおいて普遍的だと感じるところがあり、私自身が物事のやり方を決める時の指針としてメモします。

3つのやり方

軍隊経験のある人なら、世の中には「正しいやり方」と「間違ったやり方」と「軍隊方式」があることを知っている。<中略>…軍隊方式は白とも黒ともつかない雲に覆われている。このやり方では、うまくいくはずのものがなぜか失敗したり、惨めに失敗するはずのものが空前の成功を収めたりする。
「UNIX方式」は、この軍隊方式にどこか似ている。

Mike Gancarz 著, 芳尾 桂 監訳 , UNIXという考え方(2001, オーム社) P.120より

本書では、UNIX方式を軍隊方式になぞらえて、正しいとも間違っているとも言い切れないやり方としています。多くの評論家から批判され、当然死ぬべきはずのものなのに、生き残り続けている。軍隊方式というのは我々日本人には馴染みの薄いものですが、「軍隊」の部分を「(自分の所属する)組織」や、もっといえば「自分」に置き換えても、よく理解できるのではないでしょうか。私たちはたいてい、正しいとは言えないが、間違えているとも言い切れないやり方をしています。そして時折、「こんなんじゃダメだ、こうあるべきだ」と、正しいやり方を考え、実践しようとしますが、結局それは果たせられぬままに頓挫し、最後に残るのはいつものやり方。何故そうなってしまうのか、本書によれば、それは「劣るほうが優れている」から、と。逆説的ですが、要は正しいとか優れているという言葉をどのように解釈するのか、という問題かもしれません。

正しいやり方ができない理由

アプリケーションとシステムが単純で、正しく、一貫していて、完全でなければならないことに反対する人は、UNIXプログラマにも少ないだろう。重要な点は、これらの特性にどう優先順位を付けるかだ。

Mike Gancarz 著, 芳尾 桂 監訳 , UNIXという考え方(2001, オーム社) P.120より

大切なことは優先順位であるということです。私たちに与えられている時間は等しく有限であり、また費やせるリソースも限られています。そして「正しさ」を実現するためには、リソースが足りない。

結局、正しいやり方というのは往々にして現実的ではないということでしょう。あまりにもコストがかかりすぎる。実際振り返って見ても、ある計画を達成するために満足な時間と人的資源が与えられている幸運な状況が、これまでにあっただろうか、と思います。

一方で、正しくはないが間違えているのとも違う、本書でいうところの軍隊方式、劣ったやり方は、少なくとも現実的です。優先順位をつけ、できることをやる……最終的に失敗することもあるでしょうが、成功することもあるでしょう。どうなるかはわかりませんが、一定の成果は残します。

正しさに拘ることはない

以上のことから導きだされる私の結論は、これからやろうとしていること、今やっていることが、どう考えても正しいとは言えないものでも、だからといって気に病むことはない、ということです。むしろ、そのほうが往々にしてうまくいく。なぜなら、それが現実的なものだから…と、本書に書かれている趣旨からは外れるのですが、こんなことを考えました。自分の今後のキャリアに関わることについて思い悩んでいるうちに、考えたことです。こうあるべきだという筋論に拘泥せず、大まかな方向性が決まったら、あとは目の前にあるものを優先順位をつけて片付けていく、ひとまずは「俺のやり方」でやっていこう、と思っています。やや抽象的な話になってしまいましたが。

しかしながら、一つ気になるのは、間違ったやり方との違いでしょうか。それは、成果物の有無が一つ基準になると思います。まともな成果物が一向に生まれないのであれば、多分それは間違ったやり方といえるのではないでしょうか。

それにしても、「劣るほうが優れている」とは、なんと魅力的な言葉でしょうかね。こういう逆説を体現するようでありたいし、またその気持ちをいつまでも忘れずにいたいものです。

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