IoT の期待感と現実

IoTが新しい顔文字に見えて仕方がありません。この言葉を見ない日がない今日この頃です。急激に流行りだしたように思いますが、それはいつ頃からのことだったでしょうか。これからのトレンドとして非常に期待されていますし、私もこういった流れを好ましく思っていますが、どこか胡散臭いものを感じる自分がいることも確かです。この期待感と、胡散臭く感じる理由について、少し考えてみました。

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IoTってなんぞ

IoTはInternet of Things、すなわちモノのインターネットとのことですが、字面だけ見てもなんのことやらという感じです。実際のところ、言わんとする概念は漠然とわかるのですが、なんといいますか、クリアに、明瞭に、ハッキリとわかる感じではないのです。私なりの理解をなんとか説明すると、これまでネットワークに参加してこなかった機器やセンサーを繋ぎ、それで得られる情報を集約してコンピュータで処理することで、これまでわからなかった情報を提供するもの、といったところでしょうか。たとえばトイレに人感センサを置いて、そのセンサーの情報を無線で別室のコンピュータに送り、いつでもトイレの空き室状況を照会できるようにしたり、使用時間を解析してトイレの個数は適切かとか、トイレ掃除を何時にするのが適切であるかを判定したりなんていうのが、実用性はともかくとして、規模は小さいながらIoTと言ってよいのかなぁと思います。私の最初に思いつく例がトイレというのが、なんともアレですが。

いくつかのキーワード

この概念には、これまでにやはり流行した、いくつかのキーワードが絡みます。どれもこれも確とした定義があるようなものではなく、人によって説明はまちまちなのですが、私なりに書いていきます。ビッグデータ、大量のデータにフィルタをかけ、通常人間には気づきえないような有用な知見を拾い上げる。クラウド、これまで手元にあったデータをネットワークの向こう側にあるサーバー上に預け、ユーザーはクライアントとして必要に応じてサーバー上のデータを利用できる。ウェアラブル、身につけられるコンピュータ。スマートセンサー、単に情報得るに留まらず、解析し、また場合によっては他のセンサーと結びついて相互に情報のやりとりもする。ユビキタス、あらゆる場所にコンピュータがあり、利用される社会。こういった言葉ですね。

現実に夢が先行している

私にとって、なんとなくわかるしなんとなくわからん概念たちです。世間一般でもそれは同じようで、こういった言葉はバズワードと呼ばれます。これらの言葉を尽くして説明されることのあるIoTは、さながらバズワードの集大成でしょうか。わかるようなわからんような……。

思うに、そのわからなさが魅力の源泉なのです。わかってしまえばつまらない、わからないこそ夢がある。私が先にあげたIoTの例は、随分とつまらない話ですが、しかし現実に落としこまれた事例は、さほど面白くはないのではないでしょうか(技術的には面白そうですけど)。概念の名前が現実にある事物に先行して流行るというのは、結局そういうことなのだと思います。iPhoneをもって「これがユビキタスかも」と思う人はいますが、この場合iPhoneを以ってユビキタスが説明されるのであって、ユビキタスを以ってiPhoneが説明されるわけではありません。つまり概念先行は順番が逆です。なので、いかに著名なアナリストがIoTは○億ドルの市場になると見込まれるとか持て囃しても、私はたいへん眉唾だと思うのです。

まぁ、期待されるほど夢いっぱいではないと思いますよというだけで、小型のセンシングデバイスとネットワークを用いたこれまでにない小さな革新はきっとたくさん起きるでしょう。私も期待しています。でもそれは多分、エンジニアには楽しいけれど、普通の人にはさほど面白くない話なのではないかなぁ。そして本当にこいつはすごいやという変革が起きれば、多分概念の名前ではなくて、実際の事物の名前が象徴的に使われることでしょう。

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